鳥取県東部医師会 在宅医療介護連携推進室

【 協議会 】平成30年度第3回 東部地区在宅医療介護連携推進協議会の協議概要

◆ 平成31年2月6日(水)19時~

◎協議会長挨拶

みなさんこんばんは。平成最後の冬は比較的穏やかに過ごせているものの、インフルエンザが流行しています。今日はお忙しいところお集まりいただきありがとうございます。

我々の活動のかたちはできていると思いますが、その中身を充実させ浸透させていくには非常に長い時間がかかるのではと最近感じています。しかし、多職種の研修は順調に進みたくさんの方に参加いただいており、情報共有のシステムも今後ますます発展していくことと思います。ACPに関する啓発活動も数多く地域住民さんへ徐々に浸透しているのではないでしょうか。

今日は意思決定支援に関する取り組みについて時間を取っていますので、皆さんの忌憚のないご意見をいただきたいと思っております。

◎報告・議事

(1)平成30年度の活動状況について

今年度でこの事業も4年目となり、推進事業(ア)~(ク)の8項目を行っている。

・「切れ目のない在宅医療と介護の提供体制の構築推進の取り組み」として、昨年度、入院情報連携シートと救急連絡シートを作成した。今年度は、資源マップWEBシステムの随時情報更新と全事業所を対象とした再調査を昨年11月に行った。

・相談支援に関しては次第3で報告。

・各ワーキンググループの状況は資料のとおり。情報共有支援ワーキングでは、今後の情報共有のあり方を検討中。その中で、明文化されていなかった、病院とケアマネ間の決まりごとやルールを作成することとなり、まずはコアメンバーによる部会を設置し作業を行っている。

・多職種研修会は今年度5回実施、5回目は3月17日に開催する。近日中に参加者を募集予定。事例検討会は4回開催。各担当者に講演内容、進行をお願いしている。次回は3月6日、訪問看護師からの事例提出。

・住民啓発はACPのパンフレットを作成したH29年11月から活動回数を重ね、昨年6月には終活支援ノートができた事もあり増えている。住民だけでなく関係者向けにも行っている。このACPパンフレットは内容を検討し、3月に一部改定予定。終活支援ノートも今年6月に5千部再作成予定。今年度作成分のノートは、啓発活動用に推進室が保有していた1,500部は既になくなり、各包括に残っているものを利用中。

・ファシリテーターについては、フォローアップ研修でプレゼンテーションの講義、演習を行った。活動としては絆研修会や住民啓発活動などで活躍いただいた。実績は資料のとおり。絆研修会の事前準備はフォローアップを兼ねたものになっている。

・関係市町村との連携については、行政ワーキンググループで取り組み中。先ほどお話した終活支援ノートは、新温泉町を加えた1市5町でなる因幡但馬麒麟のまち連携中枢都市圏で企画作成した。また、新温泉町へのACP研修を支援している。

 

 【 意見等 】

● 救急シートの活用状況はどうなっているか。

○ 救急隊員に確認したところ、救急シートの活用はまだないとのこと。

(2)平成31年度の重点取り組みについて

在宅医療介護連携推進事業は来年度で5年目となる。来年度は3項目を重点取り組みとする。

1.住民啓発の推進について

 平成29年2月に寸劇を行い、作成したDVDやパンフレットを活用しながら徐々に活動を広げているところ。老人クラブやサロンからも依頼があるが、活動は2年目で、まだ知らない住民さんは多い。そういった無感心期の住民さんへの幅広い啓発活動を進めたい。

2.多職種連携研修会の継続

 絆研修会は引き続き第4クール目を実施するが、研修の評価を行い、新しいものにするのか継続するのかなど検討もして行きたい。

 事例検討会は年4回開催予定。

3.情報共有支援の取り組み

 8項目最後の取り組みとなったが、昨年3月にWGを設置し協議を始めたところ。まずは入退院時のケアマネと医療機関との情報連携の強化に向け、様式や業務の流れといった手順書を作成、完成を目指したい。

会の様子

 

 【 意見等 】

● 超高齢社会の中で、単身高齢者や認知症高齢者に対しての在宅医療介護連携が出来ているのかという観点から、来年度の取り組みにこういった計画は含まれているのか。

○ 全ての取り組みにおいて細かい計画はしていないが、高齢者が住み慣れた地域で最後まで暮らせるようにというのが事業の目的となっている。認知症高齢者、単身高齢者の事例が今後増えてくると思うので、事例検討会などでなるべく取りあげたい。

● その辺りを問題視し意識して取り上げて行かなければ連携は進まないと思う。何が適切なのか、例えばWGを作り、そこで検討していく必要があるのではないか。

○ 認知症、単身高齢者の問題は通常の問題とも違い特殊で支援もたくさん必要。もちろん今までも意識しているが、引き続きそういったことを考えながら、全ての項目に取り組んで行きたい。

○ 事例検討会では困難事例として認知症や単身高齢者について話題に挙がっている。これからも努めて認知症の方、単身高齢者をサポートできるような観点で研修や連携を進めたい。

● 情報共有支援WGの取り組みについて、手順書を作成するとのことだが、進行具合はどうか?WGで協議・検討を開始し、いきなり作成という報告では手順書のイメージが具体的に湧かない。

○ WGでは既存の様式を拾い出し現状把握を行った。また、保健所と行ったケアマネアンケートから見えた病院との連携状況や退院調整率といった課題、ケアマネが業界的に統一した動きになっていないこと、一人ケアマネや人の入れ替わりで業務引き継ぎがきちんとできていないという話も聞いている。医療と介護のマナー的なところもかみ合っていないようなのでそういった部分も含め、共通した入退院ルール、ケアマネ共通ルールや業務マニュアルを作成しようと決まったところ。

● 医療連携協議会で様式は作成したのではないか?それに追加してルールやマナーを作るということか?

○ 28年度に医療連携協議会と介護・医療連携シートを作成したが、今年度の介護報酬改定に伴い厚労省が様式例を出したため、それを使うのか、今までの分とどう違うのか、どう変えるのか医療連携協議会と協議中。手順書は様式も含め、それを誰がどう取扱い、誰にというところまで含めたい。

○ ルールを作ったことで中西部では退院調整率が上がったように、東部でも中西部を超えるよう、みなさんと連携がとれ調整率が上がるようになればと期待している。

● 連携協議会は10病院の急性期と回復期が集まって話をしている。今回、厚労省から出た様式を医療側の現場で確認し、これでいこうという話になりつつあるが、医療のシステムも変わり在宅が入るようになったことで、そこと協議会との連絡がうまくとれていない。当会でこの書式でとなっても、現場のケアマネから問題点がフィードバックされてきたりする。そこの連携をどう強めていくかということも当会で議論している。在宅も含めてこちらでも話を進めていければ。

● 様式が出来ても、中身の問題がある。相手がどういう情報を求めているのかが重要。ここでは介護と医療となっているが、医療と医療、看護と看護の中でも連携が難しい。医療側は病気や疾患のところが中心で、私たち訪問看護は生活を中心とした医療のところが中心。違って当たり前のところをどうすり合わせるか、そこを縮めるための研修を行ったりしている。私たちはどのような情報を出せば良いのか、退院後の情報を(病院側に)送っていないので、退院指導が本当に良かったのか病院看護師は気にしているようだが、こちらが出さないので相手には分からない。病院看護師は退院後、様子が気になるけれど7対1の関係や人数の加減で、在宅の様子を見たいけど出れないという状況でいつまでも平行のまま。そのために看看連携の研修をしている。中身の事は様式を整えてからになるのかなと思ったりするが、中身のところも重視してほしい。医療と医療も難しいので、医療と介護は更に、言葉の問題もあり難しく、そこについても考えてほしい。

○ 訪問看護ステーション連絡会の方にもWGへ参加いただき、同じような意見をいただいている。欲しい情報を様式に落とすのか、くださいよというものを入れ込んだらどうだという意見もある、これからの検討として活かして行きたい

● 医療と医療、看護と看護といったお話を熱心にされているが、この話に開業医はほとんど入っていない。退院時に病院主治医から在宅主治医へ手紙は来るが、開業医には介護の情報が入ってこない。そもそも厚労省が図示しているものが開業医にデータがこないという仕組みになっている。主治医の返事と一緒に開業医にも介護の情報を必ず封書で届くようにするなど、その辺りを皆さんで考えて欲しい。医師は全体の介護の中で何を話されてもわからず判断ができない。情報が入ることでより正しい判断ができるようになる。

● 単身高齢者、認知症高齢者の場合、本人以外が情報を出すことが難しい。親族がいれば開業医に話すことはできるかもしれないが、単身高齢者では難しい。入院しても情報が開業医に来ないのは問題だと思う。そのあたり、特殊性があるのではないかなと思った。

○ 居宅ではケアマネから情報が届いているし、施設では施設ナースに病院から看護連絡票が届くことが多い。そのあたりで情報提供してもらい把握するケースもある。

○ 医師同士、看護師同士、施設間で共有されていない問題と医療介護の情報共有がごちゃごちゃになっているのでは?同職種についてはその団体である程度情報共有していく仕組みをまず叩いて行かないと、それをこの全体の会でやってしまうと何を共有するのかとなってしまう。例えば開業医に情報が入ってこないという共有自体の問題であればWGで管理するとか、情報を出しているけど届いていないことを問題視するのかな。各団体が施設を超えて連携する、情報が回る仕組みを考えなければいけない。全体像のことをWGで強化した方が良いと思う。情報を出しているのにそれがうまく回らないことが問題。

○ 沢山意見が出ましたので、参考にしながら次年度進めて行きたい。

 

(3)在宅医療・介護連携「相談支援」の概要報告

10月以降は1件、住民からの相談。訪問診療を行う医療機関を教えて欲しいという内容。回答として、個別ケースの相談窓口は包括支援センターであること、状況を話されたので、かかりつけ医に相談するよう助言。包括へも情報伝達済み。

過去の相談内容と回答はホームページへ掲載している。

 

(4)介護支援専門員からの意見に対する協議・検討

・今回は、新規検討事項なし。前回協議会での検討結果を報告。

・主治医へのアポ取りを含めた利用目的もあり、これと似たような様式を使っているケアマネもいる。ケアマネと主治医の連携がうまくいっていないという相談が推進室にもあるため、このような様式があればある程度うまくいくと思われる。ただ、顔の見える関係づくりも大切。

  委員からは、似たような様式を見る。時間をかけて書けるので電話よりは良い。一度は顔をを見せてほしい。といった意見。様式の統一については情報共有支援WGでの検討課題とする。

・2つめ、制度変更時の細かな部分の理解が難しく、気軽にやり取りできる窓口が欲しい。これに対しての委員からの意見は、顔の見える関係づくりとして事例検討会へ参加いただきたい。訪問看護支援センターの相談窓口にはケアマネや行政、病院ソーシャルワーカーなど含め年間200件を超える相談がある。推進室でケアマネからの相談対応ができないか、など。しかし、この方の本心は、行政には聞きづらいこともあり職能団体内での相談窓口、教育機能を希望されているのではと思われる。ケアマネには非会員も多く、何かできることがないのかとケアマネ協に話をした。

  ケアマネ協からは、以前相談窓口を設けていたが件数が少なかった。1人ケアマネやキャリアの浅い人からはこのような意見もあると思う。顔見知りや裾を広げるような関係づくりができるよう会員外を含めた無料の研修会を開催しているので参加して欲しい。

 

 【 意見等 】

● 見本にあるような様式を使われているケースも多いと思うが。

○ 独自では作っていない。資料と似たようなものを使っているケアマネが多い。

● 評価指標とは?

○ 保険者機能強化推進交付金の評価項目のひとつ。

 

(5)ディスカッション

 【 テーマ 】 意思決定支援に関する取り組み

推進室の取り組みのひとつである住民啓発の推進は、地域包括ケアの植木鉢のお皿の部分、本人の選択と本人家族の心がまえが大切ということで現在進めている。それに合わせ、ACPについてもパンフレットやノートを利用しながら、住民だけでなく多職種の関係者にも広く知っていただきたく啓発を進めているところ。厚労省が3月に改定した「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」にもACPの概念が盛り込まれている。

4月の介護報酬改定では、入院時情報提供書や退院・退所情報記録書に本人家族の意向欄が追加されたり、厚労省はACPに関するリーフレットの作成や、愛称を人生会議にするなど啓発を始めている。

今までは医療機関だけのガイドラインだったものが医療ケアのガイドラインとなり、介護側も医療ケアチームの一員に、そして患者ではなく本人と明記され、本人や家族をしっかり支援していきましょうという内容になった。それぞれの職能団体では従来から取り組まれていることと思うが、本日はその内容についてご紹介いただき、我々の事業の参考にしたい。皆さんよろしくお願いします。

 

◆ 急性期病院ではACPの議論が少なく緩和医療の中で少し議論されているのが実情。急性期病院では救急の中でどう議論していくかを考えなければいけない。これからの高齢化社会で色々なシチュエーションの患者さんが来られる中で、救急で来る人は救命することが第一であるが、ではどこまでということの議論がまだ十分でない。そういったところを含めて検討しなければいけない。

◇ あらかじめ持病を持っていてそれが増悪して救急病院にお世話にならないといけないケースが多いと思うが、事前指示、挿管しないでとか書いている人は少ないですよね?

◇ 救急で来る人は救命せざるを得ないのが実情です。

◆ 若桜町の取り組みとしては3回、包括職員がACPについての説明を行った。今後は3月3日、町内の住民を対象にACPを取り入れた寸劇を実施しながら普及啓発を予定。80~90歳代への介護予防のお話は集団指導や難聴者もおり反応が乏しかったが、70歳代中心のサロンの中では反応が良かった。民生委員の反応も良く、個別に勧めたい方があるとのことでパンフレットを渡したこともあった。

◇ 85歳以上だと難しいのかもしれないが、丁寧に聞けば意思表示もできたりするので、今後丁寧に進めていってほしい。

◆ 八頭町は予定の段階であるため取り組みは紹介できないが、旧小学校区単位でACP啓発事業を計画していると聞いている。

◆ 寸劇シナリオの読み合わせを市民後見支援チームで29年度から毎年行っている。支援ができている場合とできていない場合を比較するような話。今日の協議会での意思決定支援・ACPは、人生の最期の段階の話だが、私達にとってはもう少し前の話。日常生活の中での意思決定支援が積み重なることで、最期の段階での色々な意思決定支援に繋がると思っている。

例えば医療関係のインフォームドコンセント。説明の仕方をうまくやれば本人の意思決定のもとに色々な承諾もできると思うのだが、今の医療現場では、私たちが関わっている保佐人や補助人、成年後見人とかそういった言葉がつくと、この人は判断能力がないと思われてしまう傾向がある。本人に確認するよりも家族や成年後見人に説明して判子をもらうという傾向がある。先日、私が保佐人として関わった人は、ペースメーカーを埋め込む必要があり、医師は緊急だったため本人の同意無く緊急の措置をした。その後正式な手術をすることとなって本人の同意が必要となった。私は保佐人だったので本人は十分判断できますよと先生に伝えたが、先生は本人に判断能力はないと判断して私に説明をされた。私自身に医療同意権はないが、身内がいない方だったため効力はないがサインした。そういった経験から、お医者さんがインフォームドコンセントに求めている能力はかなり高いなと感じたことがある。会長が言われたように、もう少し言葉をうまく話せば本人にも十分通じるのにと。丁寧に話して行けば十分に伝わるのではないかと感じている。

成年後見の分野で診断書が4月から変わる。本人が判断できないから成年後見という誤った運用をされてきた経過があり、支援をすれば判断できる人は補助や補佐になる。支援しても無理な人が成年後見なのに、本人ができないから成年後見だという間違った考えを正すよう、支援という要件が入る。今後、成年後見の診断書を書かれるお医者さんは支援者の話を聞かなければいけないルールになり、支援者からのペーパーを見ながら書くことになる。医療介護の連携において介護者の連携がないと成年後見の申立もできない状況になると感じている。

◆ 社会福祉士会では、権利擁護の観点から「権利擁護センターぱあとなあ鳥取」を中心に、成年後見活動においての意思決定支援について、会員の自己研鑽の機会として定期的に勉強会を東中西部で行っている。その他、鳥取県精神保健福祉士会、鳥取県医療社会事業協会、社会福祉士会共催のソーシャルワーカーデーにおいて、2015年に国学院大学教授 佐藤彰一先生(弁護士)をお招きし、「意思決定支援とソーシャルワーク」をテーマに講演、シンポジウムを行った。次年度の同イベントではACPの見識を深める講演会等を企画検討している。

社会福祉士会には高齢者支援や障がい者支援などの各委員会があり、医療現場に勤めている社会福祉士は、その委員会の色々なところに属すような属さないようなところがあった。そこで昨年、委員会を編成し、保健医療委員会ができた。主なメンバーは病院のソーシャルワーカーで、病院での入退院に関すること、意思決定支援に関することなど患者さんから聞き取りすることも多く、委員会の強化をしていきたいと考えている。そして病院ソーシャルワーカーから施設や在宅関係、権利擁護センターなどで働いているソーシャルワーカーへその意思決定を伝えていく、反対に在宅への意思を繋いでいけるよう、医療と在宅との連携強化を考えていきたい。

◆ 鳥取市社会福祉協議会では資料にあるように大きく2つ。1つ目は、日常生活自立支援事業(以前は権利擁護事業と言っていた)で、現在鳥取市で60名くらいの支援を行っている。対象は判断能力が不十分な状態にある方、特に認知症高齢者、知的障がい者、精神障がい者で、日常の金銭管理等を支援員を設置し対応している。支援内容は、福祉サービス利用援助、日常的金銭管理サービス、書類などの預かりサービス。本人と社協との契約締結でサービスを提供している。

2つ目は成年後見事業。法人の後見事業として、対象者は判断能力が不十分な状態にある方、紛争性が無く身上監護と日常的な金銭管理が中心の方が該当する。

場所は、さざんか会館1階に「鳥取市権利擁護支援センターかけはし」を設け、2つの事業を実施している。

◆ 東部圏域別研修会を昨年7月に実施した。足立誠司先生を講師に、ACPについての講演とグループワークを行い、ACPへの理解を深めた。参加実績は33名であったが、絆研修等たくさんの研修が行われているので、ケアマネの中でACPはかなり浸透しているのではないか。ケアマネが意思決定等を確認することはアセスメントや支援を行う中でも重要であり、ACPを通じて振り返りという意味でも、それぞれがケアマネジメントに更に取り組んでいらっしゃるのではないかなと思う。

◆ 看護協会では県の委託事業で鳥取県訪問看護支援センターの出前事業を行っている。今年度は20回、月に2回程度の出前講座を行った。最初は訪問看護の使い方などを広報していたが、最近は感染症の話の依頼が多い。そのような講座の中でも、なぜ元気なうちに人生の最終段階の暮らし方を考えることが必要なのかといったACP絡みの話をして、今回は感染の話だったけれどこんな話もできますよと来年度に繋げるようにしている。本日お配りした「在宅療養をはじめるまえに~家でも大丈夫~」にACPの内容だけではないが、最後に書く欄がありそれも使っている。講座といっても少人数の住民さんなので、「もし食べられなくなったら?老衰になったら?今の気持ちを少し書いてみませんか。」など皆さんとキャッチボールをしながら、社会情勢など背景にあることもお伝えしている。

また、看護学生の講義や看護協会の研修会でも、私達は医療職なので意思決定支援をしていかなければいけないが、私達も一住民なので、まずは自分達のことを考えてみましょう。といったような話をしている。看護学生や若い看護師は自分の将来のことをまだ想像できない年代ではあるが、私達の年代になるとすぐそこで考えていかないといけない。また、婦人会なども聞いて下さっている。

会の様子

 

● 足立先生、研修会等されての感想を教えて下さい。

○ 私自身が色々な研修会に出て感じるのは、医療介護従事者がまず意識していないところが前提にある。また、本当にACPが良いのかどうかという議論も同時に考えてなければいけない。そもそもこの考え方は、欧米である程度有効性が証明されたので日本に取り入れられた。歴史上、外国は20年以上前から個人の意思決定支援という問題に対して真剣に考え、個人の権利ということで国民の中から法律になったという背景を考えたときに、本当に日本にきちんとフィットしているのかということ。今は家族が決めたら誰も文句を言わない、家族の意向に逆のことをしたら医療訴訟さえされる、そのような国民性でもある中で、はたして個人だけの意思を尊重することで日本国民は満足できるのか。そういったことも一緒に議論していく必要があると感じている。

 

 【 意見等 】

● 厚労省から意思決定支援という言葉を含めたものが3つ出されている。平成29年3月「障害福祉サービス等の提供に係る意思決定支援ガイドライン」、平成30年6月「認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン」、同年3月「人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン」。そこで意思決定支援という言葉が混同して使われているという問題がある。

意思決定支援に対立する概念、、代理決定ですね、例えば家族が代わりに決定するとか成年後見人が代わりに決定するとか。本人の最善の利益を考えて本人のために代理人が決定するのは代理決定であって意思決定支援ではない。それと同じような表現がACPの中にもあり、参考資料8~9ページ「2.人生の最終段階における医療・ケアの決定手続」の(1)本人の意思が確認できる場合、(2)本人の意思の確認ができない場合で、できない場合の①家族等が本人の意思を推定できる場合にはその推定意思を尊重し、とあるが、これは意思決定支援ではなく代理して決定する方向になっている。

このことについて、今、大阪家庭裁判所で弁護士会、司法書士会、社会福祉士会等が集まり、ここは明確に区別しようという議論をしている。推定的意思が本人にとっての意思なのかということも含め、本来は(1)本人の意思を確認するために色々な支援をする、ことが意思決定支援だと自覚的にしないと失敗するよという議論。平成29年3月に出された厚労省の意思決定支援の説明がそこをごっちゃにするような説明だったので混乱を招いているなと感じている。本人の意思決定を色々なかたちでサポートするにはどうやってサポートするのか。医療の場面は人生の最終にいかなくてもその手前に様々な医療を受けるが、そこに本人の意思決定が入ってこないと変なことになるなと感じている。

● この会は、障害を持っていようがいまいが、若かろうが老いていようが関係なく、住み慣れた地域でさいごまで、いわゆる地域包括ケアをシステムとして確立するために医療と介護がしっかりと連携していないといけませんよということでできた事業。そのような観点からいくと、確かに意思決定は大切ではあるが、来年度の事業の中でACPが突出しており、少し違和感がある。

本来の目的である医療と介護の連携はまだまだできていない。患者さんが急性期の病院に入院して退院し、かかりつけの開業医さんに戻り退院前カンファレンスをしっかりやって、関係する医療介護が情報を共有しながらその人が退院したあと快適に暮らせるようなやり方を、といっても連携ができていない。だから、先生が言われたように一体どうしてみていったら良いのかという話になる。退院前カンファレンスも点数がついているのにしっかりできていない。認知症だろうが単身だろうがそういう人をどうやって医療と介護で連携してみていくのかという話。ほとんどできていない連携のところをもっとしっかり力を入れてほしいが、意思決定のところがものすごくクローズアップされ、この場でそこまで議論するのかなという違和感がある。

○ 今回、意思決定支援がテーマとなっていたことも、そう思われた理由の一つかもしれない。医療と介護の連携はできていないので、しっかりとやっていかなければいけない。

○ 先生が言われたことは興味がある。連携できていない部分をぜひ来年度の重点取り組みとしていただきたい。医療介護連携がきちっとできるようにしようというのがこの会の目的だと思うので、今できていないところはまな板にのせていただき、それをWGでするのかこの会でするのか選択はあると思うが、そこをぜひ重点項目としてほしい。そうすれば認知症高齢者問題、単身高齢者の問題など超高齢社会の中で問題となっていることが必ずその内容になってくるのではないかと思う。

○ 医療介護の連携はまだたくさんの課題がある。重点取り組みのひとつの情報共有支援で取り組みを進めて行くこと、多職種連携研修会では顔の見える関係づくり、知識向上、連携強化に繋げて行きたい。ACPが突出しているという意見については、住民啓発の事業が住民からの依頼が多くボリュームがあるのも事実。それぞれについてもしっかり取り組んで行きたい。

 

4.その他

研修会等のご案内。鳥取県東部圏域の新たな医療連携フォーラムが2月24日に鳥取県立中央病院で開催される。梶井先生の講演と中央、日赤、市立病院長が参加されるパネルディスカッション。絆研修は本年度最後の開催で近日中に案内予定。鳥取市地域ささえ愛フォーラムは鳥取市と社協の共催。

先ほど若桜町からのお話にも出た、わかさの保健医療を考える集いは3月3日。案内文が出来たら推進室ホームページなどでお知らせしたい。

 

● WGがたくさん立ち上がって精力的にご検討いただいていると思うが、元締めの総合企画WGでは、どんな話をしてどのように進めようとしておられるのか、そこに入っていない者には見えてこない。今日、皆さんから出たご意見を踏まえ、総合企画WGで31年度の活動方針をご検討、お示しいただき、6月の協議会に臨めればいいのかなと。それぞれはそれぞれのWGに参加している者しか分からないというわけではないとは思うが、元締めのところで事前に皆さんに知らせていただけると嬉しい。

○ 次回協議会は6月7日で、その直前と年度初めに総合企画WGがある。そこでもう一度事業計画を再検討したい。

 

   ◉ 次回協議会は平成31年6月7日(水)19時~

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