鳥取県東部医師会 在宅医療介護連携推進室

【 協議会 】平成30年度第1回 東部地区在宅医療介護連携推進協議会の協議概要

◆ 平成30年6月7日(木)19時~

◎協議会長挨拶

お忙しい中お集まりいただきありがとうございます。平成30年度第1回目の協議会となります。今年度から、地域包括ケアの取り組みを全ての市区町村で実施することとなりましたが、ご承知のように我々は3年前からスタートしており、この3年間で取り組みの骨格ができたと考えております。

今年度は診療報酬と介護報酬の同時改定がございました。特に連携ということが協調されています。同じく改定された県の保健医療計画では、地域医療構想がクローズアップされています。また、足立副会長が希望されていた「アドバンスケアプランニング」の概念を(保健医療計画の中に)入れて欲しいということについても、「生涯住み慣れた地域でその人らしく生きる」といった方向性が保健医療計画の中にしっかりと記されました。このことは大きなポイントです。東部圏域におきましては、鳥取市が中核市となり、鳥取市保健所が中心となって地域医療計画について引き続き考え、地域の医療、介護の方向性について議論を深めて行く機会も多くなるのではないかと思います。

最初に申しましたように、この推進協議会をもとにした活動は多方面にわたっており、多職種のみなさんには非常に熱心に活動いただいておりますが、われわれ医師会の参加が消極的なのではないかというきらいもあるのかなという気がします。私の希望としましては、より実践的な在宅医療に即した研修を進めて行かなくてはいけないと考えているところです。実際わたしは在宅医療をしておりますが、分からない点や疑問点が多々あり、それらについて推進室に相談しております。色々な先生方が思うようなことを時間をかけてでも対応していけるような推進室であってほしい、育てていきたいと思っているところでございます。われわれも在宅医療に関し、もっとこうしたらよいのではないかと思う点も出てくると思います。そういったことをディスカッションの場を設け、より良い方向へ進めて行ければとも思っていますので、皆さんも引き続きご協力いただきますようよろしくお願いします。

◎報告・議事

(1)平成29年度事業実績及び平成30年度重点取り組みについて

・平成29年度の事業報告。推進室は引き続き行政、医師会2名ずつで業務を行っている。協議会は年3回開催。ワーキンググループは課題別に設けそれぞれ活動しているが、地域資源ワーキングは資源マップをWEB化にしたことにより活動を終了した。ファシリテーションワーキングは保健所と共催のファシリテーター養成研修およびフォローアップ研修修了者を対象に、多職種研修や住民啓発学習会等で活躍いただいている。3年度目となるファシリテーション研修は26名の参加者があり、計84名のファシリテーターを養成した。事例検討会は年4回開催。6月8日に開催する今年度第1回目の事例検討会は70名程度の申し込み。多職種連携講演会では県外講師を招き講演いただいた。

医療介護連携推進事業の取り組みを始めて3年目ということで、他の圏域から、ここの取り組みを聞きたいという声もあり、何回か県外に出てお話をさせていただいた。

・平成30年度の重点取り組みは前回協議会で出したものと同じで4点。住民啓発の推進は、寸劇による住民啓発を行うことになったが、都度劇を行うのも難しいためDVDやパンフレットを活用し、ACPを住民へ啓発しようと活動中である。3月に新設した情報共有の取り組みについては、まずは東部地域の現状を把握し、新たなことができるかどうか検討することとなった。入退院時の医療と介護の連携強化は、平成27年と29年に行ったケアマネアンケート結果に基づき、同じく調査を行った中西部に負けないようしっかり取り組んで行きたい。多職種連携研修会は、多職種研修ワーキングで検討した結果、基礎知識の向上ということで1クール3回の絆研修を行っている。現在2クール3回目を今月24日に開催。今年度中に3クール目を行いたい。事例検討会も引き続き年4回開催予定。

また、参考資料として鳥取市の第7期介護保険事業計画から「在宅医療介護連携の推進」部分を抜粋したものを添付している。具体的な施策4つ「関係機関との連携の推進と課題の検討」「医療介護関係への支援」「住民啓発の推進」「在宅医療介護の提供体制の構築推進」は、ほぼわれわれが掲げている4つの項目と同じような内容になっている。あとで目を通していただければと思います。

 【 意見等 】

● 東部地域ではこの3年間で地域包括ケアシステムの骨組みができたと言われました。次の課題としては、色々な当事者や本人が出てくる中で、それがきちっとそこへ繋がれるかだと思う。私がよく関わる方…在宅の人・判断能力が不十分な人、認知症や精神障がい者に対し、きちっとそういうことができるのかが問題意識としてあり、例えば地域包括ケアの中でせっかくできている連携へ繋げるために、そういった人が医療から連携していくためにどういうふうにするのでしょうかとか、成年後見だけでなく色々な制度を使いながらこんなふうにできますよといったような内容を住民啓発DVDの中に追加し、次のステップに進めないかなという希望がある。

○ 3年間で枠組みはできていますが、実際広げていくのはこれからになる。

○ 鳥取市では中央包括のエリアで認知症初期支援チームを立ち上げている。認知があり医療と介護に結びついていない方を重点的に最初の6か月間介入しサポートする試み。全ての方を対象とすることは難しいが、症例があがってきている症例については少しずつ成果が上がっている。

○ 認知症は大きな社会問題にもなっている。将来認知機能が低下する可能性の高い方に、事前に自分自身の意思、価値観、大切にしたいことを医療関係者や家族と話し合っていただく働きかけが必要ではないか、ということでACPという概念を地域住民や関係者へ知っていただくために、啓発活動を本格的に開始しているという実情もある。

● ACPの概念は、今は判断能力が十分あるので、事前に最新の意志表明をしておこうという意味なのか?

○ 将来認知機能低下をきたす可能性が予想される方に、前もってある程度元気なうちから関係者や家族と話し合いをしておく。これはとても重要なことなので、現在周知活動を行っている。制度を知るということを何かに盛り込みたい場合、そのようなテキストを改変したり、住民啓発の中にそういった内容を入れることは可能だと思う。

● 判断能力不十分といっても、色々な段階があります。悩まれるのはそういうところで、色々な意味で今の意志を引っ張り出したい、というときにどのような関わりをしていけば良いのかがいわゆる課題となる。重点取り組み1の住民啓発に関してはそういうこと。重点取り組み3の入退院時の医療と介護の連携強化というあたりも、現在不十分と思われる方にどのような対応をされるのかを重点取り組みの中にいれていただけないのかと考えたりしている。

○ 入退院については次の報告で、ACPについてものちほど詳しくお話したいと思いますので次に進みます。

会の様子

 

(2)医療・介護に係るアンケート再調査(ケアマネアンケート)について(保健所より報告)

昨年度行ったケアマネアンケート結果より、ケアマネの意見を含め、病院へ返すということで推進室と一緒に病院訪問をさせていただいた。連携上の問題は若干下がり、量的なものとしてみても良くなりつつあるのかと思う。以前より連携しやすくなったという意見もあるが、問題点は以前と変わらない傾向である。顔の見える関係は進みつつあり、きっちりされているところもある。カンファレンスの持ち方は今後の課題かなと感じた。また、東部で統一した様式は決まったが、入退院ルールについては特に定めておらず、退院調整率は78%で前回とほぼ変わっていない。中西部に追いつこうと思ったときに、やはりルールが必要なのではという意見もある。

課題は解決できたものばかりでなく、内容は2年前と変わっていない。情報提供書の活用を進めていくことや、病院とケアマネの顔の見える関係づくりも必要である。また、アンケートを開始する際、病院に対しての配慮が足りなかったので、今後は留意しきちんと説明をしていかなければいけない。

入退院調整ルール、病院の連絡窓口一覧の作成、ケアマネと病院との意見交換・交流の場を作る、カンファレンスの持ち方等の研修が今後の課題であり、また重点項目の中にもあった入退院時の医療と介護の連携も引き続きの課題である。

 

 【 意見等 】

● 病院から、せっかく患者さんを元の状態にもどしたのに施設が受け入れてくれないという話を聞いた。実際そういうことがあるのか?

○ 個人的意見としては、比較的受け入れて下さっていると思う。私は整形外科医ですので骨折などの場合になるが、この状態で受け入れて下さるのかと思ったことはしばしばある。ただ、施設間で温度差はあるように感じる。受け入れを待っていただける期間が極端に短く、原状回復したときには戻れませんとか、原状回復したので施設へいかがでしょうかと話をし、そこからのスタートがゆっくりめな施設もある。急性期病院としても限られたベッド数で、入院期間を短縮するよう求められており、そういったところで密に連携を取っていければと思っている。

○ 施設にもたくさん種類と性質がある。当施設しては、必ず家族、病院、本人と話をする。医療措置が必要であれば受け入れ対象外ということもあるが、施設から一方的に入所できませんといった話はない。施設の性質もあるので、すべての施設がそうであるとは言い難いが…。

○ 施設によってかなり温度差があるのかなといった印象を受けた。このアンケート調査および意見交換内容に基づいてすり合わせをしていってはいかがかなと思います。

 

(3)相談支援業務の実績について

・平成30年度より介護保険の保険者(各市町村)がどれだけ頑張っているかの評価指標を厚労省が示しており、その中に在宅医療の相談支援業務について、このような多職種の集まる中でしっかりと報告ができているかという項目がでてきた。今後逐一、協議会の中で報告させていただきます。

・平成28年11月に相談業務を開始し、平成29年3月までの相談内容を資料の表に、平成29年4月から30年3月までを資料の裏に掲載。いずれも7件で、在宅医療介護連携に関する関係者からの相談を挙げている。

 【 意見等 】

● 件数は少ないが、相談した人の許可があれば、こういったことを公表してもよいのでは?一般的な話として、よくある質問のようにまとめたものを表に出してもよいのかなと思う。そうすることによって相談件数が増えるのではないか。

 

(4)終活支援ノートの作成について

鳥取市が終活支援ノートを作成することとなった。編集等は業者が行うが、冊子に企業広告を掲載することで行政側の負担はない。ほかの全国の自治体でもこういうものを作っているようで、近隣では松江市が昨年度、米子市も同じタイミングで作成すると聞いている。

一度書いたら終わりの一般的な終活ノートとは違うものにしたいので足立先生と相談し、ACPの概念を盛り込んだものとなっている。資料は校正段階ではあるが、ほぼこのような内容になる。第2章「もしもの時は」では、話し合いをした結果、何かに書いておくといいですよというところ。広島の「わたしの心づもり」という記入用紙や、厚労省の「人生の最終段階における医療・ケアの普及・啓発の在り方に関する検討会」の中で神戸大学 木澤先生が作られたものを参考にした。1.元気なとき、2.病気のとき、3.人生の終活を考えたときの3回分で同じ内容となっている。

活用については、無料で配るといっても終活ノートとして使って終わりとなってしまうので、パンフレットと一緒に配布したいということを各市町へ提案した。ノートの完成は6月末。これをきっかけに住民啓発活動や、住民からの問い合わせが多少なりとも増えればと思っている。毎年中身を変えるタイミングがあるので、今回はこのような内容で行きたいと思う。

 

 【 意見等 】

● 各市町によって配り方が違ってくるのか?

○ ACPパンフレットと併用して説明しながら配っていただきたいが、各市町で住民と関わるパターンが違ってくると思うので、主体性を持って配布いただきたい。

● 新温泉町の方をオブザーバとして今後この協議会に参加いただくのか?

○ 鳥取市が中核市となり、新温泉町もあわせ1市5町で因幡但馬麒麟のまち連携中枢都市圏を形成し、一緒に取り組める事業は一緒にということでこの在宅医療介護連携事業も一緒に、となっている。特に、救急搬送について、美方郡からの救急搬送が多く、また新温泉町の方が急性期に入院し東部の慢性期病院に転院されるケースも多いと聞いている。一緒に取り組まなければいけない、取り組んだほうが良い案件もでてきており、終活ノートも一緒に、となった。協議会への参加は今のところ考えていないが、先日、1市4町で集まる行政WGを行った際、こういう行政の集まりに一度来ていただいても良いかなと感じた。向こうからもぜひ東部の取り組みが知りたいということで講演依頼もきている。

 

(5)各WGより

多職種研修WG

絆研修は2クール目となり、3回目を今月24日開催。申込者は56名、ファシリテーターは8名。今年度中に3クール目①~③を開催予定。この研修は初学者を対象にしており、医師が参加いただくと研修生が医師とお話ができとても良い経験になる。皆さんと顔を突き合せたいと1クールだけでなく2クール目にも出席いただいている方もいらっしゃる。

主に経験者中級、上級者向けの事例検討会は年3回開催予定。13回目を今月8日に開催。足立先生、高田先生の講演。

住民啓発WG

住民向け啓発状況は資料のとおり。作成したパンフレットを活用し、民生委員さん、公民館、健康づくり推進員さんなどにもPR中。問い合わせも増えつつある。ACPについて知っておくべき関係者にもまだ浸透していないようなので、関係者向けの啓発活動も行っている。今後は包括圏域のケアマネ研修会、地域支援口腔ケア食支援研究会、新温泉町などでACP研修会を開催する予定。

情報共有支援WG

8項目で最後の取り組みとなったこのWGは、3月に第1回目を開催した。まず東部の現状を把握し、言語の共通化、様式の共通化についての課題などを見つけて行きたい。

ファシリテーションWG

ファシリテーター研修受講者を対象に、今後の活動可否について保健所と一緒にアンケート調査を行った。83名中57名が活動可との回答。フォローアップについては、絆研修の準備研修がフォローアップを兼ねたものとなっている。今月24日開催の絆研修では、ファシリテーター8名、準備研修のみ参加8名の16名でワーキングを開催中。

今年度は新規養成ではなく、ファシリテーター対象のフォローアップ研修を行いたい。時期、詳細については未定。決まり次第ご案内

 

(6)その他

視察対応

・6月1日に、愛知県にある国立長寿医療研究センターの在宅連携医療部長 三浦先生が視察に来鳥された。ACPに関しての住民啓発について、仕組みや取り組みについて足立先生と説明を行った。研究センターは在宅医療介護連携を組み立てた国の中枢機関であり、われわれの取り組みを注目いただいたこと、国の参考にしていただけるような取り組みになったのかなと感じている。

・三浦先生は人生の最終段階における研修プログラムを作られた方。住民に対しての活動まで落とし切れていないという問題を抱えておられる現状で、関係者にどう伝えていったら良いかということで一緒に情報共有させていただいた。これは全国的に難しい問題でもあり、鳥取東部でも同様である。今後皆様と一緒に考えて行きたいと思う。

 【 意見等 】

● 実際進めながら検討して行きたい。

訪問看護情報提供療養費について 資料(PDF 294kb)

・訪問看護の医療保険利用者に対する内容。このたびの報酬改定より、これまで市町村に出すことができていたものが市町村の保健師さんなどからの求めに応じて出すこととなった。しかし、市町村からの要求時だけでなく、こういう方がおられるので一緒に連携したいとステーション側から行政へ問い合わせしながら行っているところ。このことを市町村の方々はご存知なのかなということと、私たち自身も保健師の役割を知らないといけないと感じている。もし可能であれば、保健所さんの協力を得て、話し合う機会を設けるなど一緒に進めて行きたい。

 資料の療養費2と3が新設になったが、3は看護サマリーを出していたものの報酬。これを開業医の先生にまず送って、先生が情報提供書と一緒に病院へ持っていただけるとこちらへ報酬が出る。しかしこれは無理だと思うので、出すとすれば予定入院の方の場合になると思う。もし予定入院となっても診療医の先生は疑問に思わないで欲しい。このことについて、訪問看護ステーション側から先生方へ直接情報提供をしたほうが良いのか相談させていただきたい。私達は、患者さんが朝緊急入院になったとしても一日訪問をして夕方にならないとサマリーが書けないため、先生への提出が間に合わない。報酬がつかなくても後になっても連携する上で提出したいと思っている。

 【 意見等 】

● 認知症高齢者の増加が見込まれることから地域包括ケアシステムの構築が重要だと思っているが、認知症高齢者の問題意識で議論しようとしたときに、ここの場所が相応しいのか、ワーキンググループがあってそこで議論していく方が相応しいのか。もしワーキンググループがあるのなら、そこに参加するにはどうすれば良いのか。ないのであればそういったものを作る手立てはあるのか。

○ 認知症高齢者に関しては住民啓発や色々な研究会があるので参加ご希望ということであれば承りたいと思います。

○ ワーキンググループ設定については、どの職種が集まれば最適なのか検討し、承認するのがこの場である。

● 認知症高齢者に対する地域包括ケアシステムについての問題点を検討する場合、この協議会では難しいという理解で良いか。

○ 問題設定の仕方だと思う。この場である程度方向付して行った方がいいと思う。

 ◎ 次回は、10月3日 水曜日 19時~

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