わたしたち協議会住民啓発WGのテーマでもある「ACP(アドバンス・ケア・プランニング)」について考えるシンポジウムが、鳥取市立病院主催で開催されました。
広島県で「ACPの手引き」作成や「ACP」の普及啓発に御尽力されている本家好文先生の特別講演と、足立先生(協議会副会長)がコーディネーターのシンポジウムには久保先生(住民啓発WG委員長)、富桑地区で住民啓発「うちげぇに帰りたい」を開催された西川氏(鳥取市西人権福祉センター所長)も登壇されました。
住民啓発活動で伝える側の私たちも、まず自らがACPの理解を深めるための研修会となりました。
◆日時 平成29年12月10日(日) 13時30分~15時30分
◆場所 さざんか会館5階大会議室
■特別講演概要
「ACP(アドバンス・ケア・プランニング)~もしもの時のために話し合いを始めよう~」
本家好文 広島県緩和ケア支援センター長
広島県地域保健対策協議会(広島大学・広島県・広島市・広島県医師会)で平成25年からACPの普及を始めた。
今日のサブタイトルに「もしもの時」としたのは最期だけではないから。しかし、命の終わりについても話し合いを始めなければいけない。既に話し合っていたり、自分の意思を書面に残すことには賛成したりする国民は多いが、実際の書面作成は3%程度と低い。
医師としての経験上も、もう少し元気な頃に話し合いが出来ていればと思う場面が多い。ACPは、病気になってからや死の目前でなく、元気なときから家族などと一緒に考え、文書に残し、そして見直していくこと、プランニング(ing)だから進行形である。
AD(アドバンス・ディレクティブ)は、一人で事前指示書の作成が目的、ACPは、関係者と一緒に話し合うことが目的で、結果(正解)は話し合いの中で創られる。
ACP導入のタイミングは難しいが、医師がきっかけを作ると円滑に進むようだ。広島では医師への啓発から始めた。鳥取のように地域への広がりも意識し、ACPを地域の文化にすることを目指して今後も取り組んで行く。
■シンポジウム
●住み慣れた我が家でのくらしと、旅立ちのときを支えた絆ノート
久野絵里子 鳥取市立病院 病棟看護師
・自宅に帰りたいという思いを尊重し、在宅療養後方支援病院の仕組みで退院した高齢者。入院中に絆ノート「私の心づもり」での説明により意思表示があった。その後救急搬送による再入院となったが、本人の心づもりを尊重し看取りとなった事例。
●東部圏域における住民啓発の新たな取り組み~我が家(うちげぇ)に帰りたい~
久保 克行 鳥取市立病院 歯科医長(協議会住民啓発WG委員長)
・実際の医療現場では本人と相談・決定することができない場合が多い。WGは、住民が自分たちの選択と心構えを熟考し行動できるように支援することを目的に活動している。
地域包括ケアについて、人生の最終段階における選択と心構えについての2つのパンフレット作成と、寸劇を活用した参加型の学習会を設立した。開催2事例の参加者からは、わかりやすかったとの感想がほとんどであった。ぜひ皆さんの地域でも開催して欲しい。
●「地域まるごと支え愛」を目指す富桑
西川 秋夫 鳥取市西人権福祉センター所長
・2月の寸劇住民啓発学習会に参加してみて「地域包括ケアシステム」がよく分かった。地域福祉の取り組みを行っている「ふそう支え愛ネットワーク」で、7月にこの学習会を開催した。
・劇の練習を重ねたり、伝えるために用語の意味を調べたりで、主催者側もとても勉強になった。参加者も活発な意見交換をされ好評であった。後、地区文化祭で寸劇を再び披露した。意見交換はできなかったが思いは伝わったと感じている。
■講師・シンポジストとのディスカッション
コーディネーター:足立誠司 鳥取市立病院地域医療総合支援センター長(協議会副会長)
・経験を通じて、いろんな考えがあっていいんだなと思えた。患者・家族を支えられるようもっと勉強していきたい。
・本人・家族に様々な思いがある。本人の選択が分かると問題が一気に解決する場合がある。思いを汲取れる体制、関係性が理想である。
・もっと早くACPを知っていればという思いもある。地域全体で考える土壌があれば、個人も少し気持ちが楽になるのかもと思う。
・身内でも聞きにくい。何かのタイミング、きっかけで話し合いしなければいけない。最終的には、当たり前のことになって、ACPの取り組みがなくなるのが理想。
◎参加者:81人