研究会の場を通した医療・介護にまたがる様々な情報の共有、相互の連携を深めることを目的に、多職種事例検討会を開催しています。
■ 「事例を通した医療・介護連携の情報共有・知識向上」
■ 「研究会参加による、医療・介護関係者の顔の見える関係づくり」
◆ 第42回 東部在宅医療・介護連携研究会 事例検討会
◆ 令和8年3月6日 19時~20時30分 ハイブリッド 開催
◆ 演 題: 「ACP(アドバンス・ケア・プランニング)その先へ
~決めたことを守る支援から 変わりゆく心に寄り添い続ける支援へ~」
◆ 事例提示: とうぶざいたく 國本あずさ
◆ 総評レクチャー:栄町クリニック 松浦喜房 院長
◆ 世話人:東部医師会 在宅医療介護連携推進室(とうぶざいたく)
【 開会挨拶 】
皆様 こんばんは。皆様方には日ごろのお仕事でご多忙の中、また年度末で何かと気ぜわしい日々をお過ごしのことと思いますが、第42回の事例検討会に御参加いただきまして、誠にありがとうございます。 今日は推進室のお世話で、昨年に続きACPに関連した事例検討を行っていただきます。昨年2月の第38回事例検討会におきましては、ACPは、いつ誰がどのように作ってゆくのかといった検討が行われました。今回は、とうぶざいたく國本さんより、終末期ケアに対して事前に自己の意思表明を行うことに関連して、よくありそうな問題をはらんだケースを提示していただきます。この事例を通して、ACPを進めてゆくうえで重要なことは何かを、皆様と一緒に考えていくことになると思います。それでは、どうぞよろしくお願いいたします。(松浦会長)
【 演題概要 】
“とうぶざいたく”の事業として2018年からACPの啓発活動を行っており、これまでに延べ8,000人以上の方にお話しをさせていただいている。地域の皆さまからは、ACPは大切なことだと感じた、とのお声をいただく一方で「すでに話し合って延命はしないと伝えてある。」「配偶者が亡くなった際に子を交えて話し合い、すべてを伝えて了解してもらっている」など、決めている・伝えている・書いていると言われる方も一定数おられるのが気になるところ。 この度の事例検討会では、多職種で意思決定支援について考える場を設定することで、何か気づきを得ることが出来るのではないか、そのために仮想事例を提示し、事前に決めた通りに行かなかった苦痛から、意向は変わるのが当たり前という前提にたち、多職種がどのように連携すれば、「今の最善を支えられるのか」を深掘りしたいと考え企画。
◆ 仮想事例の詳細などはこちらからご覧ください ⇒ 概要要約 (PDF)
覚書 (PDF)

●グループワーク➀
【設問】元気なうちに、専門職のチームとして「もしもの時(急変やパニック時も含む)」を想定してどのような話し合いや、本人家族への声掛けをしておくとよいでしょうか。どのような対話を繰り返すと良いでしょうか。
~皆さまからのご意見を一部ご紹介します~
・S氏は人工呼吸器やチューブを入れるのが嫌と言われているが、専門職から人工呼吸器は取れることもあるという説明ができていれば、本人の気持ちが変わる可能性もあったのではないかと思った。
・覚書も一回書いて終わりではなくプランの更新時など、その都度話し合って、本当にこれで良いのか、また覚書の深堀りをしてあげるのも良いのでは。
・医療の部分だけでなく生活の部分ももっと聞き取れていれば、色々な切り口があったのでは。
・ACPが3年前に行われていた。この3年間に色々な事があったと思うので見直しができていれば良かった
・本人や家族の気持ちが変わることは、ごく自然な事であるという説明もあったら良かったのでは。

●グループワーク➁
【設問】「助けてくれ」「あの時死んでいればよかった」どちらが本当の意思だと思いますか?私たちはその「揺らぎ」をどのように受け止めると良いでしょうか。 今、チームとして、S氏と長女へそれぞれ、どのような言葉をかけ、どのような「次の約束」をすると良いでしょうか。
・どちらも本心だったと思う。医療者の立場からはS氏に対しては「あなたは助かって良かったんですよ」と、長女には「あの時の選択は間違っていませんよ」などの声掛けが大切。
・「助けてくれ」と言われたら寄り添い、「死んだ方が良かった」と言われれば、生きてくれているからこそ、その言葉を発してくれたんだと受け止めて、両方の言葉に対して返答する。最終的には助かる命だったということを分かってもらえればいいかなと思った。
~最後に松浦会長に総評をしていただきました~

本事例のS氏が残した覚書は、代理人の指定や終末期医療の内容を指示するアドバンス・ディレクティブ(AD:事前指示)に相当すると考えられる。アメリカでは1960年代以降、人工呼吸器の発達に伴い永続的植物状態の患者が増加し、患者の自己決定権の尊重が重要な課題となった。その後、将来意思決定できなくなる場合に備えて治療範囲を示すリビングウイル(LW)を提案し、その後1990年には患者の自己決定権法が制定され、医療機関はAD作成の支援を行うことが義務化された。しかしADの所持率や実施率は低く、内容が医療現場で十分活用されないなどの問題が明らかとなった。その改善策として、医療者との話し合いの結果を医師の指示として記録する方法が導入され、患者の希望に沿った終末期ケアに一定の成果を示した。こうした試行錯誤の中から生まれたのがACPであり、ADの作成自体よりも、患者の価値観や人生観を家族や医療者と繰り返し共有する対話のプロセスが重要とされる。日本でも厚生労働省のガイドライン改訂を通じてACPの概念が導入されており、文化的背景を踏まえつつ、患者の意思を尊重した終末期医療の実践が求められている。ACPは医療者を交えた話し合いを繰り返し実行することが重要である。
◆ 参加者:48名( 医師 11名 看護師 6名、介護支援専門員 10名、薬剤師 5名、社会福祉士・事務職 各3名、医療ソーシャルワーカー・生活相談員・理学療法士 各2名、介護福祉士・保健師・認知症地域支援推進員・鍼灸師 各1名)