研究会の場を通した医療・介護にまたがる様々な情報の共有、相互の連携を深めることを目的に、多職種事例検討会を開催しています。
■ 「事例を通した医療・介護連携の情報共有・知識向上」
■ 「研究会参加による、医療・介護関係者の顔の見える関係づくり」
◆ 第39回 東部在宅医療・介護連携研究会 事例検討会
◆ 令和7年5月7日 19時~20時30分 ハイブリッド 開催
◆ 演 題: 在宅療養における調剤報酬について
◆ 講 師: 徳吉薬局 徳吉 淳一 氏(薬剤師・世話人兼)
◆ 事例提示: 「在宅における緩和のための、PCAポンプを用いた医療用麻薬持続注入の事例について」
◆ 講 師: 徳吉薬局日赤前 鍛治川 友晴 氏(薬剤師)
◆ 世話人: 堀内医院 堀内 正人 先生
【 開会挨拶 】
在宅における緩和ケアに有用なツールであります、PCAポンプを使用した症例についてご紹介をしていただきます。患者さん自身が自分の痛みの程度に応じて鎮痛剤を調節できるこの方法のメリットと、注意点について理解を深めていただきますとともに、緩和ケアに実際に触れていただく良い機会だと思っております。それではどうぞよろしくお願いいたします。
【 演題概要 】
令和6年度調剤報酬改定における、在宅医療に関する項目、特に連携に関する部分について解説。(厚生労働省の資料参照)
【 事例提示 】
在宅における緩和のための、PCAポンプを用いた医療用麻薬持続注入の事例について紹介
・83歳 女性 要介護3 高齢者世帯(ご主人と2人暮らし) 近所に娘家族が居住
・主病名(特発性間質性肺炎) 既往歴(高血圧 逆流性食道炎)
・症状、状態は、呼吸苦の訴えがあり、酸素吸入2.5L実施。全身の筋肉を使って呼吸するような状態。体力の消耗は激しく、夜間の睡眠や昼間の生活にも支障あり。
・本人の希望は「とにかく息苦しい状態が続いているので緩和したい」家族は「医療用麻薬に全く抵抗がないわけではないが本人が希望するなら理解できる」→医療用麻薬の導入に至る。家族も色々と不安な様子。
・医師より、呼吸苦緩和目的で医療用麻薬の持続投入の導入について、どのような投与設計がよいか相談を受ける。
・1日の投与量、想定される投与期間、レスキューを使用した場合、副作用の有無、麻薬の効果、または急遽投与量を変更したい場合等を想定し提案。使用するポンプはクーデックエイミーPCA。
・投与後の多職種連携について、医師と処方内容や副作用有無について都度確認、訪問看護師と事前にポンプの使用方法やアラームがなった場合の対応方法について確認し、患者や家族と投与開始後から副作用や、呼吸苦の緩和状況について都度確認を行う。同時進行でポンプの動作に異常や問題がないか都度確認を行う。
・投与開始後、呼吸苦は緩和され睡眠がとれるようになるなど生活状況の改善がみられる。
・大きなトラブルはなく経過したが、アラーム発生時の対応等、家族の負担が想定していたよりも大きかった。
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【グループディスカッション】
~薬剤師として感じた課題~
1,処方指示からポンプ準備などを含め、投与開始までのスピード感
2,薬局の開局時間と処方箋のタイミング
3,PCAの使用回数と薬液終了タイミング予測の困難感
4,訪問看護師との連絡ツール(スピード感)
5,ポンプのアラーム対応(家族の負担増)
~皆様からのご意見~
*連絡ツールについては電話だけではなくチャット等の共通ツールがあれば良いと思う。現場ではLINEを使ったり工夫をしているが、鳥取県東部圏域での共通ツールがあればスピード感のある連携がとれ、より良い在宅支援が出来るのではないかと思う。
*アラームが鳴った場合に多職種にも分かるようなデバイスがあれば家族だけの負担にならないのではないか。
*本人の苦痛や苦痛緩和を確認する際、ポンプの履歴だけで判断するのではなく、患者本人に直接確認し、表情スケール等を用いて判断し多職種で共有する事も大事だと思う。本人としてはボタンを押すこと自体が安心感に繋がっている場合もあることを自身の事例からも感じることがあった。
*特に山間部の支援では多職種連携が大事になるが、PCAの薬剤対応が出来る薬局がない場合、市内の薬局が対応していくことについても限界がある。
緩和ケアとは苦痛を緩和してQOLを向上させることである。以前から終末期医療やインフォームドコンセント、リビングウィル、ACPなどとあるが、看護協会の「在宅療養を始める前に」という冊子を在宅の方にお渡しすることが多く、日頃から活用している。今後は益々在宅療養が必要な方が増加していく。終末期の医療を考えるよい機会となった。(堀内先生)
◆ 参加者:49名( 医師 6名 看護師 9名、介護支援専門員 6名、事務職 3名、薬剤師 20名 保健師 2名 社会福祉士・介護福祉士・生活相談員 各1名)