鳥取県東部医師会 在宅医療介護連携推進室

第33回 東部在宅医療・介護連携研究会(多職種事例検討会)を開催しました

研究会の場を通した医療・介護にまたがる様々な情報の共有、相互の連携を深めることを目的に、多職種事例検討会を開催しています。

■ 「事例を通した医療・介護連携の情報共有・知識向上」

■ 「研究会参加による、医療・介護関係者の顔の見える関係づくり」

 

◆ 第33回(令和5年11月10日)19時~20時30分

◎ 松浦会長挨拶

皆様、こんばんは。11月に入っても25℃を超える日が続いていましたが、週末はかなり冷え込むようです。インフルエンザをはじめ、感染症が多くなっており、ご多忙のことと思いますが、足元の悪い中、第33回の事例検討会に大勢の方々がご参加下さいまして有難うございます。

本日は、皆木先生、山根さんにお世話をいただき、国府町居宅介護支援事業所の松田さんに症例提示をお願いしています。様々な理由で医療介護が行き届くことが難しいケースは、皆様もよく経験されていると思います。今日は、会場参加の方も多く、久しぶりにグループで話し合うには、適切なテーマではないかと思います。日々のお仕事に役立つ実りある会となることを期待しています。どうぞよろしくお願いいたします。

◎ 世話人挨拶

皆さんこんばんは。今回ケアマネジャーの参加が一番多いようですが、医師や看護師も参加されています。日頃、医療・介護・福祉での協力がなかなかできないことがあります。それを繋げていくのがこの検討会ですので、皆さんぜひ一緒にそのような会にしていければと思います。(鳥取生協病院 皆木 真一 先生)

私もケアマネジャーをしており、こちらが必要だと思っていても受入れが難しいこともあり、悩むことが多々あります。事業所内で相談もしていますが、今回は皆さんと色々な情報や知恵をいただきながら、私自身も勉強したいと思っております。(ケアプランセンター幸朋苑 山根 樹美 氏)

講演の様子

 

◆ 演 題: 本人が必要性を感じないためにサービス利用に繋がらないケース

◆ 講 師: 国府町居宅介護支援事業所 松田 萌 氏(介護支援専門員)

【 概 要 】

71歳男性、要介護2、独居、アテローム血栓性脳梗塞、脂質異常症、逆流性食道炎、前立腺癌。下肢筋力低下で車いすを自走。嚥下機能も低下し、むせるため決まったものしか食べない。週1でヘルパー利用。自宅環境を整備するものの転倒、怪我を繰り返すためリハビリを利用していたが、本人の希望により終了。

*支援で気を付けたこと

・言葉の出にくさから「分かってもらえない」との思いがある。時間をかけ短い言葉で答えられるような工夫をした。

・困った時はケアマネに連絡を入れてもらうようにした。

・専門職に関わってもらう機会をつくるため、鳥取市の事業を活用した。

*支援で困ったこと

・本人に関わる人が限られ地域との関りが薄い。言葉の出にくさから話が通じないことで、より人との関わりを避けるようになっている。

・本当はこうなりたいという思いがあるかもしれないが、今の自分の状況やリハビリの経験からこれ以上の回復は見込めないと自分で判断しているため、前向きな思いが出てきにくい。

・決まったもの以外は食べられないと始めから思っており、食事内容を変える気がない。

講演の様子

 

◆ グループワーク

◇ 本人の希望を確認しながら、どのように過ごしていくことが望ましいのか

◇ ケアマネとしての関わりが本人にとって望まないものであった場合に、ケアマネができることはなにか

*キーワードは様子見。つかず離れずというのが良い。本人さんは困っていないけれど、ケアマネさんは困っている今の状況で介入することはなかなか難しい。本人さんがSOSを出されたときには繋がっているという良い距離感を持ちながら、今は様子見じゃないのかなぁという意見が多かった。本人さんには確固たる思いがあるので、本当に困ったり助けてほしい時に気付いたり分かってくれる人がいれば、少しは扉が開くのではないかなという意見もあった。困っていないと言いながらも実は寂しい、関わっていて欲しいところもあるのかもしれない。

*デイサービスは、同じ年代・状態の人がいる場所なら居心地が良いのかもしれないので、そういったところを探してみてはどうか。食の楽しみは人の欲求の大きなところ。お味噌汁を何とか食べてもらいたい。インスタントやレトルトは簡単なので、できるところから介入し、心が開いてきたところで本音を聞いていくのはどうか。

*松田さんの関りが非常に丁寧なので、ご本人の生活は満たされているのではないか。裏を返せば担当が代わった時に困られると思うので、その時に備えておくことも必要かも。また、ご本人は死んでもいいと言われるが、今後状態が悪くなった場合(肺炎で身体機能が落ち寝たきりになるなど)を想像されたりしているのかな…?そうなりたくないから仕方ないけど何かしよう、といった積極的ではないけれど何かしてみようという気持ちを引き出せることがあるのかもしれない。

*出来ることを探していくと、内服コンプライアンス、食事や水分摂取も工夫されている。金銭管理、預貯金もある。外国語など趣味的なものもある。松田さんのご尽力で環境調整やSOSも出せるようになってきている。車いすで外出もされ、これだけでも十分なリハビリになっている。焦らなくてもタイミングをみて関われば良いと思う。いまできることはACPの支援、例えば今後この家どうする?といったような内容から人のつながりの話ができるのでは。

*ケアマネさんがよく頑張っておられる。環境整備が整ってはいるが転倒すると大変なので、こまめな調整は継続するなどちょっとずつの関わりを積み重ねていくと良いかも。また、障がい手帳2級に該当するのでは?特別医療になるのでお金の節約になる。ご本人はあまりお金を使いたくないということなので、関係性を深めるひとつの手段として、そこからリハビリの話ができたりもする。言葉以外のコミュニケーションツール、手話や絵文字を使ってみてはどうか。

*主治医の出番がなかったという話がでた。訪看が関りで困ったときは、主治医に話をお願いすることもある。先生との関わりについてはどうだったのか?

▷ 怪我や飲み込みが悪くなったなどご本人の大きな変化があった場合のみ、文章にして報告している。往診時に私が同席したこともなく、関わりとしては薄いと思う。

*ケースに関わっている方であれば、こういうことあるよね、面倒なケースだなといった感情を皆さんお持ちかと思います。一人の利用者に関わる頻度は職種によって異なり、事業によってはフェードアウトする職種もある。中心となるケアマネは継続して関わっていくため、ストレスや負担がかかり疲弊してしまうと思う。皆さんからの意見にもありましたが、ねぎらいの言葉であったり、また私も含め皆さんは当事者に会ったことがないので、ここでの発言に責任はない。新しいアイディアやこんなことどうかな?といった意見が出ることによって、今関わっている松田さんの心が少し軽くなるのかなと思うので、皆さんからのそういった意見が少しでも松田さんに届くと良いなと思う。

*リハビリに対する嫌な思いが続いていると思うので、何が嫌だったのか話を聞き、リハビリという面をひも解ていくのも良いと思った。

*民生委員さんに繋げることで、もっとこまめに小回りが利くのでは。少しずつ地域に繋げていくのもありだと思う。

*ご本人の受け止めがそうだったのだから仕方ないとは思うが、一般的には本人が不快に思うようなリハビリは行わない。先ほどの意見にあった障がい手帳については、医療費の心配がなくなればもう少しこまめに関わることもできるのではないか。在宅関係は医師が前面にとは思わないが、医師が関わった方が良いときもある。

講演の様子

 

◆ まとめ

*たくさんの意見をいただきありがとうございます。今の生活を見ていると、生活自体がリハビリになっているなとあらためて思いました。ケアマネとしてどうしても最悪の事態を避けたい、そのためには予防、という思いが強くあり、何か提案しなければとなっていましたが、ご本人の本心を時間をかけて確認しながら進める必要があるなと感じました。支援者自体が少ない状況、ケアマネも異動があるので、ご本人は希望されていないけれど地域とのつながりがとても重要になってくるのではと思います。民生委員さんに声をかけるとか徐々に支援者を増やしていきたいです。今日はありがとうございました。(松田氏)

 

◆ 参加者:74名( 医師9名、介護支援専門員33名、看護師7名、社会福祉士5名、保健師4名、事務職6名、

栄養士・認知症地域支援推進員 各3名、MSW・介護職・福祉用具専門相談員・鍼灸師 各1名 )

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