鳥取県東部医師会 在宅医療介護連携推進室

第31回 東部在宅医療・介護連携研究会(多職種事例検討会)を開催しました

研究会の場を通した医療・介護にまたがる様々な情報の共有、相互の連携を深めることを目的に、多職種事例検討会を開催しています。

■ 「事例を通した医療・介護連携の情報共有・知識向上」

■ 「研究会参加による、医療・介護関係者の顔の見える関係づくり」

 

◆ 第31回(令和5年5月12日)19時~20時20分

◎ 松浦会長挨拶

皆様こんばんは。ご多忙の中、第31回の事例検討会にご参加いただき有難うございます。 5月8日から新型コロナウィルス感染症が5類の扱いとなり、日々の感染者数は明らかとなっておりませんが、新規の患者さんは散発しており、いつどこで新たなクラスターが発生するか予断を許さない状況であると思われます。感染の状況を見るため、今回もウェブ開催となりましたことをお許し下さい。

本日は乾先生と安住さんにお世話いただき、三朝温泉病院の大丸さんを講師にお招きし、妊娠中の心身の変化について、皆さんの理解を深めていただくよう企画していただきました。介護の現場では女性が多く、特に妊娠中は負担が大きいと思われます。どうすれば妊娠中でも安心して働けるのかを知り、今後の業務に役立てていただければと思います。それではよろしくお願いします。

◎ 世話人挨拶(安住 慎太郎 氏)

本日は三朝温泉病院の大丸さんをお呼びし、妊娠中の働き方について講演いただきます。今までの事例検討会は利用者さんの事例に対しての検討が多かったですが、今回は志向を変え、職員の働き方について。これは利用者さんや患者さんにも関わってくることだと思っています。妊娠されている方だけでなく、一緒に働いている方、管理者の方、法人トップの方がどのような捉え方をして働きやすい環境や状況を作っていくかが重要だと思っています。私の法人でも男性が育休取得することが増えており、女性だけでなく男性も含め、妊娠について、子を一緒に育てていくことについて、今日の大丸さんのお話の中で深まれば良いなと思います。

 

◆ 演 題: 誰もが働きやすい職場を目指して~医療介護専門職こそ知っておきたい妊娠中の身体の変化~

◆ 講 師: 三朝温泉病院 大丸 利沙 氏(理学療法士)

【 概 要 】

三朝温泉病院の概要と特徴および理学療法士が地域で産前産後の方に関わっている事業(三朝町からの委託)についての説明。

鳥取県理学療法士会アンケートより、妊産婦の働き方について困っている、悩んでいると答えた方の割合は約6割。当事者からは、リハビリ業から書類業務になり申し訳ない、どの程度無理して良いか分からないという意見。管理者からは、仕事の割り振りについて、妊産婦以外の職員への配慮も難しい等の意見。

妊産婦のトラブルとして肩こりや腰痛などの痛み、妊娠うつなどが挙げられる。また、近年は高齢出産が増えており、年齢が上がることで流産リスクや妊産婦死亡率が増加する。

体の変化について(ホルモンの影響、呼吸器・循環器の変化、初期~後期の変化)、リスク管理について(妊娠高血圧症候群、下肢のむくみなど。妊娠授乳関連骨粗鬆症(授乳によるカルシウム不足))、産前産後の骨盤状態、妊娠中と出産後の姿勢変化についての説明。

講演の様子

 

◆ 質疑応答

*三朝温泉病院ではどういった工夫をされていますか?

・私が10年前に当院へ就職した時から働くお母さんが多く、働くことに魅力を感じた。まずはマタニティ服があること。そのままの服で働かれていたり自前の職場も割とあるように思う。また、休憩室がいつでも使える環境がある。理学療法士に関しては自身でその日の患者さんのスケジュールを決めることができるため、体調の優れない時間帯は休憩室で休むことができる。困った事があると気軽に相談できる上司や同僚がいる環境も恵まれていると感じている。

*訪問業務で長距離運転する場合、時期によって振動がよくなかったり、その辺り、訪問系に特化したアドバイスがあれば。

・分かり兼ねますが、妊娠中はホルモンの影響もあり眠気が生じやすいため、長時間の運転は危険な労働になるのではないか。

 

◆ グループワーク

「自身の法人での体制(現状)」「今後あったらいいなと考える体制・状況」についてグループワークを行いました。

*規模の大きな職場では、女性や出産経験者も多いため、配慮や相談体制が整っており安心できるが、小さな事業所だと相談しにくい事もあると思う。体調が優れない時、利用者さんからは見えない休憩する場所があると良いし、男性の立場では分からないことも多いので、基準やマニュアル、話し合う場があると良い。個人の判断に任せる風潮もあるので、普段から話しやすい環境づくりが大事なのではないか。制服については目立たないような、同じようなデザインがあると良い。

・別のグループで、ハード面とソフト面で対策できるのではという意見があり、ハード面は休憩室や服など物理的なもの、ソフト面はマニュアル作りなどが当てはまると話を聞きながら感じた。妊娠したことを打ち明ける時、流産という不安や周りに迷惑をかけるのではという心配から話し辛いこともある。普段からいかにコミュニケーションをとるかも大事だと思う。(大丸氏)

*マニュアルについて、共通したものはありますか?

・理学療法士の場合は、神奈川県医師会作成のものを参考に各事業所で作ったり、放射線技師の場合は被爆があるので、厳密なガイドラインがある。それぞれの職域によって異なるが、男性だから関係ない、出産は終わっているから関係ないではなく、事業所全体で考える機会を設けることが大事ではないか。(大丸氏)

*派遣で短時間だけ働いてもらえるような体制があると有効だと思った。

*副業できる職場も増えているので、鳥取県でもそういった仕組みができると良いなと思う。

講演の様子

 

◆ まとめ

*本日参加された皆さんは、このテーマに興味を持っておられ、妊婦さんが働く環境に何かしらのアクションを起こしたいと思っておられる方々だと感じ、とても明るい気持ちになりました。妊娠すると、出産だけでなく自分のキャリアに不安を感じる事もあると思います。育休や産休後でも働き続けるポストやキャリアアップできる環境があると、妊娠出産に対して前向きに捉えることが出来るのではないでしょうか。それは男性についても同じで、育休を取得しても人生にとってプラスになる、仕事に対して良い影響になるなど、本日参加いただいた皆さんのような方が増えていけば、社会全体として温かく見守っていける環境が出来ていくのではないかと思いました。(大丸氏)

*こういった事について話す機会は少なく大変参考になりました。国も少子化対策について提言していますし、妊娠出産しやすくなる社会になれば良いなと思います。医療介護現場では女性が多く、安心して妊娠や子育てができるような環境作りを望みます。小規模なところは大変ですが、勉強、理解しながら進めていければと思います。今回は新しいテーマでお話いただき非常に参考になりました。また機会があればお話を伺いたいと思います。ありがとうございました。(乾先生 世話人)

講演の様子

 

◆ 参加者:30名 ( 医師8名、保健師7名、理学療法士6名、薬剤師・歯科衛生士・介護福祉士 各1名、行政・事務職6名 )

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