鳥取県東部医師会 在宅医療介護連携推進室

第30回 東部在宅医療・介護連携研究会(多職種事例検討会)を開催しました

研究会の場を通した医療・介護にまたがる様々な情報の共有、相互の連携を深めることを目的に、多職種事例検討会を開催しています。

■ 「事例を通した医療・介護連携の情報共有・知識向上」

■ 「研究会参加による、医療・介護関係者の顔の見える関係づくり」

 

◆ 第30回(令和5年2月3日)19時~20時35分

◎ 世話人挨拶(橋本 篤徳 先生)

本日はまず、コロナ第7派における在宅療養支援の概要について鳥取市保健所 雁長さんに、現場からの報告として、事前アンケートをまとめたものを生協訪問看護ステーションすずらん 日裏さんにお話いただいたあと、アンケートの中で皆さんが気になっているポイントについて話し合いをしようと思います。

 

◆ 演 題: コロナ第7波における在宅療養支援の概要

◆ 講 師: 鳥取市保健所 保険医療課 雁長 悦子 氏

【 概 要 】

日本で初めて新型コロナウィルスの陽性者を確認してから3年が経過。鳥取県では令和2年4月に鳥取市保健所管内で初めての陽性者を確認しもうすぐ3年になる。この間、東部医師会の先生方を始め、訪問看護ステーション、薬局、高齢者等の施設、介護や障がい者サービス施設など多くの関係機関の方にご支援ご協力をいただき、コロナに感染した方々の療養支援ができている。この場をお借りしてお礼申し上げます。春には5類感染症への意向も決まり、ほっとしたような反面、今後どのような対応になるのか検討中の段階で、不安も感じている。

第7波~第8波の在宅療養支援の状況について講演。(陽性者の推移、在宅療養支援について、支援内容、在宅療養支援の実際と課題)

5月8日から5類感染症となる。厚労省から今後の対応方針が示され、現時点でははっきりと決まっていないことが多くある。医療提供体制はどうなるのか、入院調整の在り方、陽性検査はどうなるのか、今後さまざまな調整が必要。5類になったとしてもコロナウイルス自体が変わるものではない。行動制限がなくなり、感染者が増えるのではないかという心配もある。マスクの着用は個人の判断に委ねるとのことだが感染対策はどの程度になるのか、これからはコロナと共に生きるウィズコロナの対応が必要となる。この3年間の対応も踏まえ、市民の安心安全を守るために保健所として全力を挙げて取り組んで行きたい。

講演の様子

 

◆ 演 題: 現場からの報告(事前アンケート結果)

◆ 講 師: 訪問看護ステーションすずらん 日裏 安代 氏

【 概 要 】

アンケートへのご協力ありがとうございました。現場でのいろいろなモヤモヤを共有し解消していけると良いなと思います。

事前アンケート(新型コロナウイルス感染症に関する、現場での困り事や問題、工夫などについて)結果の報告。診療に関するもの、通所施設・入所施設・訪問サービスでの対応、健康観察の電話対応の難しさ、発症届・健康観察の対応、事業の継続性と費用の問題、スタッフの健康とメンタルケアなど。

講師の事例紹介。独居高齢者、頼れる身内や知人なし。体調不良の相談電話があり、PPEで臨時訪問。熱と痛みが鎮痛剤でも治まらず受診希望。熱がありタクシー利用不可のため、やむを得ず訪問看護の車に乗せて受診介助。コロナは陰性であったが入院となった。もし陽性で入院対象でなかった場合、帰りの移動手段に困ったと思う。このようなイレギュラーで善意のボランティア的な対応は他の事業所でもあったのではないか。その行動は正しかったのかモヤモヤが残る。→現在は保健所で対応可。

まとめとして、訪問看護ステーション連絡協議会東部支部ではBCP(事業継続計画)についての議論を進めている。令和6年3月末までに、感染症や災害時でも必要なサービスを継続できる計画の立案と研修訓練が義務付けられたため。自分の事業所や業種だけでは対応困難であり、地域での連携した備えが必要だということが課題として見えている。今回の内容は、まさにBCPの課題であり、今後の地域連携につながるとありがたいと感じている。

講演の様子

 

◆ 質疑応答

*65歳以上の陽性者に健康観察を行うこととなっているが、かかりつけの診療所に発熱外来がない場合、調剤薬局へ普段飲んでいる薬の確認を行ったり、陽性者が増えるとなお大変である。初期診断は行うが、かかりつけ医がいるのであればそちらで健康観察をしていただく方が良いのではないか。(医師)

・基本的には先生のおっしゃる通り、自身で、ハーシスで良いと思われたなら健康観察を行うという申請はされなくても良いと思われます。県としては届け出された方全員を健康観察するという対応はとっていない。(県コロナ対策本部)

・市も県と同じ考え。先生がかかりつけ医の場合は健康観察しますという届け出をいただき、それ以外の方については保健所で判断するので、発生届を出していただければ。(保健所)

*介護者の方は、食事介助の時などは大変危険を伴う。施設入所の方はかなりの確率でコロナにかかってしまう。PPEを確実に装着することで感染を防げたという話も聞いたので、しっかり防護した上で、普段に近い介護をすることが望ましい。しかしそのためにはコストの裏付けも必要。その辺りの手当てもしっかり見てほしい。

先ほどの話に戻ると、外来に来られる方は60代であろうと70代であろうと元気な方が多い。大抵そういった方々は大丈夫だと思う。施設に入っている方はADLが落ちているので、コロナになるとさらにADLが落ち食欲も落ち誤嚥もおこる。施設入所者の2~3割の方は入院あるいは亡くなってしまうことは覚悟しておかなければいけない。5類になってからも細かく健康観察を続けてなければいけない。

最近気になっているのは、心筋梗塞で亡くなる方が多いということ。ワクチン接種回数が少ない、打っていない方は急激に心筋梗塞になりやすいと言われているので、ワクチン接種と体調管理を行い利用者様や患者様にうつさないことが大事。感染者の綿密な健康管理もますます求められていくのではないかと思うので、引き続き行政の支援、一人一人の心がけが大事になると思う。(医師)

*若桜町には訪問看護と訪問介護の事業所が1か所ずつある。ヘルパーさんは陽性者対応をしたことがなく、恐怖感や不安感がとても強かった。そこで、看護協会にお願いし、感染対策の方法をお話いただく研修会を開催した。(若桜町包括)

*看護協会では、保健所から依頼のあった健康観察対象者の振り分けを全県対象で行っている。東部では昨年8月に開始した1日3回の健康観察を行っていたが、現在は、高齢者でも無症状の方であれば1日飛ばしても良いことになりやり易くなった。

看護師でもPPEの着脱に不安があったり感染すれば事業所閉鎖になることを大変懸念していた時期があった。直行直帰する、事業所内を半分に分ける(片方で感染者が出てももう片方が動けるような体制)などBCPの一環として考えたり、もし事業所閉鎖となった時はどこのステーションにお願いするか考えたり。

医療よりも介護(おむつ交換できない、排尿介助ができないなど)、生活面で困ったという声が多い。ヘルパーさんにきちんと感染防御の仕方を伝え、一緒に頑張っていかなければ訪問看護師だけでは手が回らない。以前、自分が健康観察を担当した方は、デイサービス職員さんが食事を配達したり、職員さんがPPEを着て熱やサーチュレーションを測るとか、一日一回だが安否確認にもなった。若桜町でお話したのは私だったが、今後はそういったことが増えていくと良いなと考える。そして、PPEのコスト面を何とかしてほしい。医療保険では加算があるが、介護保険はない。物が買えない、買いにくくなり手薄になると思うので、何とか助けていただきたい。(看護協会)

*私達は医療介護現場の皆さんをどのように支えていくか、現場の声をしっかりと行政へ届ける立場。感染防護に掛かるコストを補助できる体制もお願いしていた。その結果、介護福祉現場では7波以降、補助金が創設されている。医療機関では感染性廃棄物もかなり出るため、廃棄費用もかかる。それに対する費用負担を県にお願いし前向きな回答をいただいている。(看護協会)

*発熱外来を行っている診療所以外に、関わっている薬局などにもPPEを配布してほしい。着衣後のPPEの廃棄も大変コストがかかる。しかし、在宅療養の場合は普通のごみとして出しており、現在はどうなっているのか。(医師)

・訪問看護師は利用者さん宅へ置いて帰る。利用者さんは72時間経過後(感染力がなくなったあと)廃棄してもらう(ガウンや手袋など危険ではないものに限る)。全国訪問看護事業協会や訪問看護財団ではそのように動いて良いこととしている。(看護協会)

・自宅訪問の際はビニール袋に入れ縛った状態で72時間後に可燃ごみとしてだしていただくようお伝えしている。(訪問看護ステーション)

・当初、薬剤師会からPPEの配布があった。ただ、自宅に入ってとなると配布された数では足りない、配布いただけるとありがたい。対応としては、薬の配達は玄関先に置き電話でお伝えしたり、発熱外来をされている診療所の門前薬局では患者さんの車まで持って行き、そのあと電話で説明することが多い。(調剤薬局)

・高齢者の方だと対面でお伝えしないとうまく伝わらないこともある。防護具は薬剤師さんにもしっかりと配布してほしい。(医師)

*同居家族の方が感染され自宅療養となった場合、要支援者の方の介護が難しくなる。そこで、町内の特養にお願いし、一時的に在宅という扱いでそこで療養いただき訪問看護にも入っていただく仕組みづくりをしている。その施設と協定書を結び進めている。(若桜町包括)

*ICT化は現場ではどの程度進んでいるのか。(訪問看護ステーション)

・当院の取り組みとして、発熱外来の予約があった場合、スマホ操作可能な方には当院ホームページから発熱外来の問診コーナーに入っていただき、接触歴や既往歴、アレルギーなどの項目、氏名など最低限の情報、乗ってくる車のナンバーや車種、色などテンプレートに記入いただく。こちらは問診と入力の手間が省けるので少しでも早く対応できるようなことを取り入れている。(生協病院)

*現場でのいろいろな声を聴かせていただきありがとうございました。それぞれの現場で必ずしもうまくいかないご苦労をおかけし診ていただいていることについて、あらためて感謝申し上げます。5類扱いになってもきちんとした対応をとること、財政的な支援については、県から国へ要望を出しているところだと思います。こちらからも県へ要望する機会もありますし、県も頑張っていただけると思う。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。(保健所)

◎ 松浦会長挨拶

皆様ご多忙の中、第30回の事例検討会にご参加いただきまして有難うございます。今回は、前回に引き続き新型コロナウイルス感染症に関連した話題を取り上げていただきました。

本日は保健所の雁長さんから在宅療養支援、訪問看護ステーションすずらんの日裏さんからは皆様にご協力いただいたアンケート回答をまとめていただきました。皆様におかれましては、ご自身の経験を振り返りつつ、今後の参考にしていただけるものと思います。本日はいろいろな現場の声を聴かせていただき大変参考になりました。ありがとうございました。

講演の様子

 

◆ 参加者:44名 ( 医師 8名、看護師 12名、保健師 10名、介護支援専門員 2名、薬剤師・作業療法士・理学療法士 各1名、

行政・事務職 9名 )

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