鳥取県東部医師会 在宅医療介護連携推進室

第27回 東部在宅医療・介護連携研究会(多職種事例検討会)を開催しました

研究会の場を通した医療・介護にまたがる様々な情報の共有、相互の連携を深めることを目的に、多職種事例検討会を開催しています。

■ 「事例を通した医療・介護連携の情報共有・知識向上」

■ 「研究会参加による、医療・介護関係者の顔の見える関係づくり」

 

◆ 第27回(令和4年5月13日)19時~20時30分

◎ 松浦会長挨拶

みなさんこんばんは。本日はご多忙の中、新型コロナウイルス感染症で大変ご苦労されている中、多くの方々にご参加いただきありがとうございます。

今回は、高齢者の自立支援に向けた取り組みを日々実践しておられる山根さんから、センターの事業について事例とともに紹介いただきます。

地域包括ケアはどうあるべきか、あらためて考えてみる大切な機会となることと思います。本日はありがとうございます。

 

◆ 演 題: 高齢者の可能性を信じて支える ~元の生活を取り戻す支援~

◆ 講 師: 鳥取中央包括支援センター 山根 伸亮 氏 (理学療法士)

◆ 世話人: 鳥取市立病院 足立 誠司 先生

鳥取中央包括支援センター 所長 鈴木 聡 氏

(鈴木世話人より)

本日は、高齢者の可能性を信じて支える ~元の生活を取り戻す支援~と題し、鳥取中央包括支援センター 理学療法士 山根伸亮さんにお話いただきます。よろしくお願いします。

【 概 要 】

▶「デイサービスに行きんさい」の功罪について

通所介護は素晴らしい事業所ではあるが、誰にでも適合するわけではない。本来有する機能や期待すべき効果を発揮するためには目的と対象者をしっかり検討する必要がある。

鳥取市の要支援者データより、通所介護を含むサービス利用者と通所介護を含まないサービス利用者で利用1年後の要介護度の変化を見ると、通所介護を利用している人は全体平均より介護度の重度化率が高く、改善する人は少ない。通所介護に期待するような結果があまり出ていない。通所介護の職員さんは皆一生懸命支援してくださっている。そうであるのに本来の機能が発揮されていないのは、対象者と通所介護の有する機能のミスマッチも原因の一つではないか。

本人さんを思っての助言「デイサービスに行きんさい」は、無料サービスや助成サービスといった「サービス」という言葉のお得感のイメージが持つ魔力により、高齢者本人もデイサービスに行きたい、と熱望される。しかし「介護を受けますか?」と問うと、まだ必要ないと憤慨される方は多い。本人や家族の希望に沿った計画だと生活課題が解決しにくい。ではどう伝えれば良いのか。「デイサービスに行きんさい」ではなく、「地域包括支援センターに相談に行きんさい」とお伝えいただきたい。

▶ 鳥取市が目指す自立支援について

鳥取市の目指す自立支援とは、本人が元の暮らしを取り戻すことに向けた支援をすること。医療介護関係者の「デイサービスに行ってみたら?ヘルパーさんにしてもらったら?」といった発言は、あなたが失った能力はもう諦めなさい、違う方向を向きましょう、と同じ意味を持ち、絶望感が強まる。

専門職としてのより良い促しとしては、「看護師さんや薬剤師さんからアドバイスをもらったら?福祉用具を使ってみたら?事業所に通ってやり方を習えばまたできるようになるかもしれませんよ?一緒に頑張ってみませんか?」と言っていただきたい。

▶ 元の暮らしを取り戻す地域包括支援センターの取組み

各地域包括支援センターで開催している自立支援型の地域ケア会議。複数の職種が知恵を出し合い連携することでより良い結果が生まれた事例を紹介。

(一部抜粋)100歳女性、要支援1、娘と同居。一人での入浴が怖くなってきたとのことだが、公営住宅のため環境整備が難しく訪問介護を利用している。→ 入浴以外のADLは自立しており、できる可能性が高そうなので、少しずつ本人にしてもらおうということに。→ 結果:本人がどんどんできるようになった。→ 気づき:「全介助するもの」という先入観があった。

▶ 鳥取市短期集中予防サービスについて

PTとOTによる生活機能訓練とセルフケアの自立を目指した指導を1~3か月の短期間で週1~2回、通所と訪問を柔軟に組み合わせながら集中的に支援を行う。本人さんと担当者に特に意識いただく点は、利用者本人の意向をしっかり引き出す。それに沿い、達成可能な目標を設定し、本人の可能性を引き上げること。

(一部抜粋)80代女性、要支援2。入院をきっかけに体力低下、息切れ、歩行障害。運動制限もあり。本人の希望は、息切れすることなく家事や農作業をしたい。バスで買い物に行きたい。(もう無理で諦めているけれど)県外に住む孫の結婚式に参加したい。→ 短時間に区切ったそれぞれの作業を体に慣らしながら遂行してもらう。小さな成功体験を積み重ね、体力と自信をつけていただくという計画を立てた。→ トレーニングを重ね、徐々にバスの乗降練習や買い物の実践練習を行った。3か月後には畑仕事ができ、バスに乗って苗ものを買いに行けるようにもなった。自信がつき、諦めかけていた結婚式にも出席することができた。

▶ まとめ

自分の気持ちを誰かに100%伝えることは難しい。ましてご高齢の方であればなおさら。介護保険制度やサービス利用に関することは一般の方には分かりづらく、それでもどうにか自分なりに考え出てきた言葉が「デイサービスに行きたい」。訴えばかりに支援を続けても元の暮らしは取り戻せない。

支援が必要な高齢者を見かけた、接した場合、特定のサービスを指定するのではなく、困りごとの解決手段として地域包括支援センターに相談するよう声掛けをお願いしたい。鳥取市の自立支援は本人の元の生活を取り戻す支援。短期集中予防サービスは良好な支援結果を出しており、もし該当するような方がおられたら、各地域包括支援センターにお声かけください。本日は多数のご参加ありがとうございました。

 講演の様子 講演の様子

【 意見交換(一部抜粋) 】

• 自身の診療を振り返ってみると、なんとなくデイサービスに行きんさいと言っていた。医療は科学的根拠に基づいた方法で治療を選択するが、介護について良いアドバイスはあまり持ち合わせていない。ケアプランの中で、本人の意向が反映されている事が重症化予防に有効であるように、今回のキーメッセージは、本人の希望、意向をどう反映させるか。自分自身も学ばせていただいた。今度からは「Cサービスに行きんさい」と科学的にみたアドバイスができるような学びをしたいと感じた。

 どんな時にCサービスが良いのでは?と感じればよいのか、どんな疾患の人で、こんな人ならCサービスが有効かもという判断材料があればお聞きしたい。(足立先生)

* これまでの症例から分かってきたこととして、要支援1,2の方は潜在能力を持っている方が多い。ただ、しっかりアセスメントすること。3か月チャレンジした結果、中長期的なリハビリが必要とか、今後は通所介護で色々な訓練をするのが良いなど判断いただける。要支援者であればどなたでもトライしていただく価値はあると思う。(山根講師)

• 利用した時のマネジメントは誰か。利用料についてはどうか。

* マネジメントは包括支援センター職員。本人さんに元気になっていただきたい、3か月の短期ということもあり、利用料は鳥取市が負担。ただ、申込書と同時に主治医の診療情報提供書をいただく決まりとなっており、診療情報提供料として1割負担であれば250円が必要。

• 自身の思いを正確に相手に伝えるために工夫されていることはあるか。

* 笑顔や話し方といった非言語的メッセージは大切。また、こうです。ではなく、どう思われましたか?と相手の気持ちを確認した上で、自分の意向がうまく伝わっていなければまた言い回しを変えてみるなどしても良いのかなと。(足立先生)

* 同じことを相手に伝える時、いくつかパターンを持っておくと良いかもしれない。話しながら相手の表情を見て、言い方を変えてみたり。ということは意識している。(山根講師)

講演の様子

講演の様子

 

◆ 参加者:89名 ( 医師 10名、薬剤師 29名、看護師 5名、介護支援専門員 17名、保健師・理学療法士・管理栄養士 各4名、

作業療法士・介護職 各2名、MSW・介護福祉士・弁護士・福祉用具プランナー・ケアプラン点検指導員・

地域支え合い推進員・認知症地域支援推進員 各1名、事務職 5名 )

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