鳥取県東部医師会 在宅医療介護連携推進室

第24回 東部在宅医療・介護連携研究会(多職種事例検討会)を開催しました

研究会の場を通した医療・介護にまたがる様々な情報の共有、相互の連携を深めることを目的に、多職種事例検討会を開催しています。

■ 「事例を通した医療・介護連携の情報共有・知識向上」

■ 「研究会参加による、医療・介護関係者の顔の見える関係づくり」

 

◆ 第24回(令和3年8月18日)19時~20時30分

 

◎ 松浦会長挨拶

みなさんこんばんは。私は6月26日をもって東部医師会会長を退任しましたが、当協議会につきましては、一診療所の立場で引き続き参加し委員を務めさせていただきます。今後とも宜しくお願い致します。

新型コロナウイルス感染症は、全国的にデルタ株を中心とする第5波が猛威を奮っており、鳥取県においても7月中旬以降、クラスターが多発しております。私たち医療介護の従事者は比較的早くにワクチン接種が行われましたが、それでも市中のみならず医療介護における感染の広がりに対しても注意を怠ってはいけない状況が続いております。

このような中で、本日は第24回の事例検討会をWEB開催させていただくこととなりました。大勢の方にご視聴いただきありがとうございます。本日は乾先生と安住さんのお世話で鳥取医療センターの看護師さん、理学療法士さんを講師とし、昨年末に開設された中国地方初のパーキンソン病センターの紹介をしていただきます。パーキンソン病指定難病の受給者証をお持ちの患者さんは全国に13万人以上おられ、うち75歳以上の方は6割を占めます。本日の講師の方々は、ADLの損なわれた患者さんが住み慣れた地域で安心して生活できるよう日々努力されていることと思います。皆様大変お疲れのことと存じますが、本日は有意義な会となることと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 

◆ 演 題: 当院のパーキンソン病センターの紹介

◆ 講 師: NHO鳥取医療センター 上田 素子 氏(看護師)

◆ 世話人: 乾医院 院長 乾 俊彦 先生・さとに田園クリニック 安住 慎太郎 氏(理学療法士)

(安住世話人より)

多くの方に参加いただきありがとうございます。先ほど松浦先生からお話されたように、鳥取医療センターにパーキンソン病センターが新規開設されました。私たちリハ職はパーキンソン病の患者さんを在宅リハビリで診ることが多い中で、センターについて知りたくてもコロナ禍の状況で見学に行くことが難しく、また地域の方も知る機会が少なくなっているのではないでしょうか。そこで本日は、お忙しい中、鳥取医療センター看護師長の上田さんにパーキンソン病センターのご紹介、看護師の長谷川さんと理学療法士の水口さんに症例提示いただきます。よろしくお願いします。

【 概要 】

2020 年12 月に中国地方で初めて開設されたパーキンソン病センター。“ずっとあなたのそばに”をセンターのモットーとし、疾患の診断から治療、最期の時までを診ることができるセンターを目指している。

パーキンソン病に特化したプログラムやリハビリロボットを取り入れた短期集中リハビリテーション入院、新たな取組み(LCIG、DBS管理)、専門職による患者相談、退院後訪問や勉強会開催など地域連携の取組みについて紹介。

また、院内認定パーキンソン病看護師によるPD看護外来を設け、患者さんの症状や生活に合わせた指導、助言も行っている。今後もパーキンソン病の患者さん、ご家族が住み慣れた地域で⼀⽇でも⻑く安⼼して⽣活が送れるように⽀援していきたい。

講演の様子

 

◆ 症例提示: 継続した在宅生活のために地域と連携した症例

◆ 講 師: NHO鳥取医療センター 長谷川 愛理 氏(看護師)

【 概要 】

PD看護師として、患者さんだけでなくご家族に対する支援体制強化の必要性を感じ、家族の介護負担を示すアセスメントツールを活用した症例を紹介。

患者さん、訪問看護師やケアマネジャーなど多職種に参加いただき、症状や対応についての学習会を実施。また、退院後訪問時に訪問看護師等と同行し家族への⽀援連携を行う中で、患者家族との信頼関係を築くことの大切さを感じた。

在宅スタッフの方々が病院スタッフに対し、どういった情報を求めているか、退院時の転書で欲しい内容などの情報共有を行い、患者や家族の身体的・精神的負担が軽減されるよう、地域と連携しながら家族支援に取り組むことが今後の課題。また、在宅⽣活を継続するため訪問看護師やヘルパー、ケアマネジャーと病院とがどのように連携を図っていけば良いかを考えていきたい。

講演の様子

(安住世話人より)

たくさん在宅へ出向かれていることに驚いた。1人の患者さんに対し、在宅に帰られたあともたくさん関わっておられることはすごい。情報交換したい、関わりたいと思う地域の在宅スタッフはたくさんいると思う。ただ、看護師さんだけが出られるのか、他の職種も希望に応じて可能なのかで違ってくると思う。次の理学療法士さんの症例提示のあと、改めて伺いたい。

【 質疑応答 】

• 退院後訪問をされているのは看護師でしょうか?退院後訪問は病院からの医療保険での訪問看護で算定されていますか?退院後に外部の訪問看護ステーションに引き継ぎをされる場合、どのように病院スタッフとやり取りされるのか教えてほしい。

・看護師、MSW、リハビリ職など多職種で訪問している。引継ぎは訪問看護や訪問リハ、ケアマネさんの訪問のタイミングに合わせてこちらも訪問し、その場で引継ぎや情報交換を行っている。また、在宅スタッフに病院へ来ていただき、退院前カンファレンスを行っている。

・診療報酬については、在宅へ帰る際に指導管理料をいただいている患者さんについては1か月5回まで。パーキンソン病患者さんについては指導料をいただくケースがあまりない。自己注、気管切開している方、寝たきり、人工呼吸器をつけている患者さんに対しての指導管理料になる。当院としては基本的なサービスとして、在宅で一日でも長く生活できることに関してさせていただいている。

• ケアマネから相談窓口に直接相談しても良いですか?県外からです。

・ぜひ相談いただきたい。電話でも良いし、オンラインが可能であれば動きなどを見せてもらい、アドバイスできることもある。

• 退院時、手厚く行かれておられますが、場所はどこでも良いのでしょうか?

・県外は難しいが、新温泉町は医療圏域内として扱っているため要望があれば出向く。若桜町や智頭町へも出向いている。西部は患者層が少なく訪問で行くことはないが、紹介で増えてきている。

 

◆ 症例提示: 短期集中リハビリテーションにて身体機能が改善した症例

◆ 講 師: NHO鳥取医療センター 水口 大輔 氏(理学療法士)

【 概要 】

近年重要性が認識され始めているパーキンソン病患者に対する運動療法や、医療センターで実施している短期集中リハビリテーション入院についての説明と、短期集中リハビリテーション入院にて身体機能改善が得られた症例を紹介。

集中リハを行うことで定期的に機能改善させ、数年後の機能低下を緩やかにさせる効果がある。定期的な集中リハを取り入れることで機能改善を図ることができるが、集中リハの間にいかに能力低下を防げるかが課題となっている。

講演の様子

【 質疑応答 】

• 医療センターへの受診履歴がない方について、例えば最近嚥下機能が落ちてきたので短期集中リハでST訓練をしてもらいたい。という場合、主治医の先生に相談しクリニックから問い合わせをしてもらう。という流れが良いのでしょうか。他にも、こんな場合はどうしたら?という時は相談センターに電話すれば良いでしょうか。

・初診の場合、まずはかかりつけ医に紹介状を書いてもらいセンターへ一報いただければ、それを拝見し予約をとる流れになる。当院には摂食嚥下チームもあるので、嚥下機能が低下していればそちらとも一緒に関わっていく。

• 今取り組まれていることの他地域への波及、広がりがあれば伺いたい。

・PDナースが地域に増えると良い。院外のPDナース育成研修も当センターの役割、課題であると感じている。PDナースはMDSJの学会で年に3~4回研修を行っており、WEBでも受講できる。難病看護師の育成も行っているので、神経難病を診ることのできるナースが一人でも多くできれば地域のつながりがより強くなるのではと考えており、今後はそのようなところにも目を向けて取り組みたい。リハビリ職もLSVTは資格になるので教えることは難しいが、患者さんの症例に関してオンライン等を活用しながら相談に応じていけると良い。

• 入院するには病名の制限がありますか?

・パーキンソン病関連疾患であれば可能。進行性核上性麻痺の患者さんなども含めて対応している。大脳基底核の患者さんなどもリハ入院していただいたりしている。

・レビー小体型認知症についてはリハの対象疾患にならない。認知症治療病棟に入院患者さんは対象になる。パーキンソン病患者さんに認知症がある場合は受けることができる。

• 入院中、セラピストさんが関わる以外の時間にも、病棟スタッフさんでの関わりに特徴的なことがあるでしょうか?

・平日は3時間程度、リハビリを中心に行っているが、休日はリハビリの時間数が減るので、看護師と一緒に病棟内訓練を行ったり、患者さんのヤール、状況に合わせた病棟内レクリエーションを週一で取り組んでいる。また、週一でPD疾患勉強会、栄養士、薬剤師の話を聞くなどしている。リハ以外ではそういったところで関わりを持っている。

• 入院中にコロナの制限がなければ、家族や、地域のスタッフが見学に行くことは可能ですか?

・コロナ禍でなければ面会は自由。在宅スタッフさんも一緒に訓練を見ていただくこともある。教室にも参加いただければと考えている。

• 外来リハビリからの相談も可能ですか?それとも入院が基本になるでしょうか?

・外来リハからでも可能だと思う。外来リハビリから短期入院に移行したほうがよいのではという医師の提案で移行するパターンはある。

• 短期集中入院から訪問リハビリへ移行する際に情報を共有したいが、直接担当のセラピストさんに問い合わせをしても大丈夫でしょうか?サマリーなど書面を準備して頂くこともできるのでしょうか?

・ぜひ連絡をください。今までは見学に来ていただいたこともある。対面だとスムーズな情報共有もできるし、書面では伝わりにくいこともある。書面も出している。

講演の様子

(乾先生より)

パーキンソン病センターでは集中的に最先端のことをしておられ、感銘しております。内科医は神経内科に関して詳しくないため、パーキンソン病の治療に携わる機会は少ないが、内科的なことで診ている患者さんには定期的にリハ入院してお世話になっている方もおられる。集中リハを行うことで現状維持できたり進行を遅らせたりもできるし、皆さん頑張っておられるなと感じている。リハによる改善が目に見えて分かる。

今後は在宅にいかにつなげていくかが課題で、自主的には難しいかもしれないが、在宅リハ職の方と連携しながら頑張っていただきたい。今日お話を聞かせていただき、センターでの取り組み、活躍に期待したいと感じた。貴重なお話をありがとうございました。

講演の様子

 

◇ 参加者:62名 ( 医師 7名、薬剤師 6名、看護師 4名、保健師 2名、理学療法士 24名、作業療法士 6名、MSW 3名、

管理栄養士 3名、介護支援専門員 3名、相談員 1名、事務職 3名 )

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