鳥取県東部医師会 在宅医療介護連携推進室

第21回 東部在宅医療・介護連携研究会(多職種事例検討会)を開催しました

研究会の場を通した医療・介護にまたがる様々な情報の共有、相互の連携を深めることを目的に、多職種事例検討会を開催しています。

■ 「事例を通した医療・介護連携の情報共有・知識向上」

■ 「研究会参加による、医療・介護関係者の顔の見える関係づくり」

 

◆ 第21回(令和2年11月11日)19時~20時30分

 

◎ 松浦会長挨拶

みなさんこんばんは。新型コロナウィルス感染症拡大の影響で3月以来事例検討会が2回延期となり、今回8か月ぶりの開催となりました。Webでの開催となりましたが、皆さんとともに学ぶ機会が持てましたことを嬉しく思い、ご参加に感謝いたします。

本日はガーデンハウスはまむら三橋さんに症例提示をしていただきます。

認知症におけるBPSDすなわち行動心理症状によって悩まされている介護士さんは多いと思います。中には理解しがたい症状もあるかと思いますが、多くは中核症状に伴う不安や混乱が続くことによって徘徊や興奮、暴力行為といったBPSDが表れると考えられています。 穏やかな生活のために大切なことは、不安や混乱を理解し、適切な対応を取ることです。

しかし、無理解による不適切なケアや体の不調、ストレスや不安の大きい心理状態では症状が悪化し介護が困難となるケースもあります。

本日は重要な問題提起をしていただけると思いますので、しっかり学んでいきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

 

◆ 演題: あなたならどうしますか?認知症BPSDへの対応

◆ 講師: ガーデンハウスはまむら 三橋 由希子 氏(介護福祉士・世話人)

◆ 講師: 乾医院 院長 乾 俊彦 先生

◆ 世話人: にしまち診療所 悠々 院長 岸 清志 先生

( 世話人 岸先生より )

鳥取県では新型コロナウィルス警報が発令され、多くの介護事業所、医療機関では面会制限や出入りの制限が厳しくなり、利用者さん患者さんはストレスのたまる日々です。それを支える医療・介護従事者にも負担がかかっていると思います。感染しないようにというストレスもあると思います。

そういった日々の中でも勉強はしなければいけないという事で、今回はガーデンハウスはまむら三橋さんに無理を言ってお話いただくことになりました。

事例提示のあと、皆さんだったらどういった対応をするか考えていただき、医療面で関わりのある乾医院乾先生にお話いただきます。最後にガーデンハウスはまむらではどういったことをされたのかお話しいただく流れで進めたいと思います。

( 講演概要:前半 )

70歳代男性、要介護1。20年以上前、仕事中(大工)の喧嘩で脳挫傷を負い働けなくなったため県外から帰鳥。その後、認知症が進行し有料老人ホームへ入所。施設閉鎖に伴い、ガーデンハウスはまむらへ入居される。BPSD症状がひどく(こだわりが強い、カッとなりやすい、介助拒否、ゴミ箱からゴミを拾い持ち帰る、衛生管理困難等)他入居者からのクレームが多く、関わることが億劫になってしまったり声かけが少なくなってしまう職員もいる状態。

医療に関しては、慢性心不全、心房細動、腰椎圧迫骨折、けいれん発作での入院歴あり。グループホーム入居後、職員と相談し、認知症より内科的診察が必要ではということで、乾先生に月1回の診察をお願いしている。

(岸先生)

このような利用者の方を皆さんが預かった場合、医師、ケアマネ、看護師、皆さんの視点からどういった対応をすれば良いか考えていただき提案をお願いしたいと思います。

(乾先生)

BPSDの症状について相談を受け、BPSD症状や体調不良についてはその都度処方薬を変えながら様子を見ている。令和2年3月に要介護3となった。現在も月1度の訪問診療を行っている。難聴があり会話がかみ合わないことがあったり、頭を打ち外傷などのトラブルもまだあるものの、徐々に問題行動は減っているようだ。

講演の様子 講演の様子

 

【 意 見 】

・いろいろな薬を使って有効なものを、睡眠状態や下垂体腫瘍など考慮しながら試みてみてはどうか。病態に対する把握の仕方が脳血管障害というより高次脳機能障がいの方だと思われること、加齢により更に進んでいるということの理解も大切。(医師)

・センター方式の24時間生活シートでその人の行動パターンを知ることも有効だと思う。本人さんが信頼していたり相性の合う職員さんからその人の訴えや要望を聞くことで、本当にそれがしたいのか疑ってかかるというか…裏には何があるのか、一歩進んだところを見ていかれてはどうか。(包括)

・行動パターンを把握すること。排泄にしても何らかの兆候があると思うので、そのあたりを把握すれば対応方法も分かってくると思う。(居宅)

・行動の裏側にある本当の気持ちや原因を、会話も難しいので、そこに寄り添ってあげられる人が必要。他の人から嫌な人と思われているのが悲しい。どのような障がいも偏見が多いので、うまく繋がっていけるような、心地よいスペースになるような工夫があると嬉しいと思う。(認知症推進員)

・この方の機嫌の良い時(おいしいとか嬉しいとか)に介入できるようなことがあれば繋がれる何かが発見できると思う。機嫌の悪いときは難しいが、嬉しいときは共有したくなるし、うまくいって褒められたときは次も他にも、となるので。(訪問看護)

 

( 講演概要:後半 )

介護面での関わりとして、職員間でこの方のこだわりの理由を探り、認めようという話し合いをした。きれい好きで几帳面なのでは?ということで、掃除しているところを見ていただいたり丁寧な説明を続けた。必要な介助を拒否することについては、こだわりを否定しない、本人のペースに合わせ見守る等の対応をした。ゴミを拾い持ち帰ることについてはゴミ箱を見えない場所に設置することで、欲しいものを職員に伝えるようになった。衛生管理が困難なことについては、食事の席を他社と離して自由に摂取いただく。初めは拒否していたが、ある時から机を他の方の机につけて摂取されるようになった。食事量や水分摂取量に関しても乾先生と連携をとり、都度対処。職員の声かけ、さまざまな余暇活動を進めているうちに笑顔が増え、おちゃめな動作も増えてきた。

現在は要介護3、怒られても拒否されてもタイミングを見ながら言葉かけや関わりを持つことを継続し、少しずつ心を開いておられることを感じている。笑顔が増え介助拒否も減少。言葉が出にくくなってきているので、職員に向けて手招きしたり、最近は職員の行動をじっと見ておられ、職員が気づいてからお願いをされることが多くなった。ADLの低下で小刻み歩行のため、転倒リスクが高くなっている。椅子やソファに座り、前傾で前のめりに転げ落ちてしまうこともある。乾先生にも相談をし、医療面での連携をはかり大変助かっている。体調が悪いようなので、今後もなるべくグループホームで暮らしていただけるよう、職員が本人の体調不良に気遣い対応できればと思っている。

 

【 意 見 】

・行動パターンがきっちりしているのは、もともと大工さんだったこともあるのでは。工作や作業療法的なところがあれば楽しみもできるのではないか。(事務局)

グループホームは認知症の方を対象とし、定員9人と少ないため、アットホームできめ細かい対応ができる。いろいろ工夫すれば人は変わっていくものだなと良いお話を聞けたなと感じている。三橋さん、乾先生、本日はありがとうございました。(岸先生)

 

講演の様子

講演の様子

 

◇ 参加者:42名

( 医師 12名、看護師・保健師 4名、介護支援専門員 13名、MSW 5名、認知症地域支援推進員 2名

 介護福祉士・ケアプラン点検員 各1名、事務職 3名 )

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