鳥取県東部医師会 在宅医療介護連携推進室

在宅療養後方支援病院の取り組み(12/11地域包括ケアシステムシンポジウム:鳥取市立病院)

鳥取市立病院が在宅療養後方支援病院の取得に伴う「絆ノート」の取り組みを開始してから1年が経過するにあたり、取り組みのアンケート調査及び各部門からの報告をもとに、地域包括ケアシステムのあり方を考える機会とする目的で、シンポジウムを開催されました。

 

◆ 日時 平成28年12月11日(日) 13時30分~15時30分

◆ 場所 さざんか会館5階大会議室

ちらし  講演会の様子

 

足立誠司医師(鳥取市立病院地域医療総合支援センター長・鳥取市福祉保健部参与)による絆ノートの概要紹介のあと、5人の講師より絆ノートに関連した取り組みについて事例を交えながら講演がありました。

 

■ 講演概要

1.「尾崎医院における絆ノートの活用」

医療法人社団 尾崎医院 尾﨑眞人 院長

・絆ノートは共同カルテで、緊急時は紹介状の替りになる。ノート記載により多職種で情報共有ができ、家族にとっても多職種のかかわりや医療・介護の状況がよく見え、安心感につながっている。結果として、より長く在宅療養できている。

講演会の様子

 

2.「ケアマネジャーとしての絆ノートのあり方」

佐治町総合福祉センター 小谷竜子 ケアマネジャー

・日々の様子が記録してあった事例は、主治医やケアマネにとってもありがたかった。入院となった場合にもとても家族・関係者に便利なノートである。しかし記録を書いてない家族もある。寝たきりの方、入退院を繰り返しそうな疾患がある方には良いが、総合診療科以外でも契約できたらいいと感じる。

講演会の様子

 

3.「歯科訪問にて命の終わるまでみさせていただいた方から得た教訓」

鳥取市立病院地域医療総合支援センター 久保克行 歯科医師

・入院中から退院後まで継続した対応ができるよう歯科医師会と協力している。終末期での対応は、医学的な問題、QOL、本人の意向、周囲の環境といった複数の角度で考慮する必要がある。また患者自身の考えや思いに焦点をあてること、それを元気な時から話し合っておくことが必要である。事例では、もう少し元気な時に本人の思いが聞けたらと思った。

講演会の様子

 

4.「訪問看護師における絆ノート患者とのかかわり」

鳥取市立病院地域医療総合支援センター 横地小百合 看護師

・訪問時に絆ノートの概要、緊急時の連絡先の確認、ACPのこと、連絡帳の活用などを再度説明するようにしている。訪問看護記録もノートに挿んでいる。家族にとっては、相談先や入院先が決まっていて安心、入院のたびに同じ説明を何度もすることがない等便利に感じているようだ。

講演会の様子

 

5.「絆ノートのアンケート調査結果について」

鳥取市立病院地域医療総合支援センター 足立誠司 センター長

・現在まで45件の契約で、16件の看取りがあったが、うち12件は在宅での看取りである。全国平均値と比べても高い率である。かかりつけ医は、7~8割が負担感もなく好評価。院内の他科とのかかわり、ケアマネとのかかわりが今後の課題。家族も95%が満足している。口腔の問題やACPについては半数がまだ関心が薄いよう。望ましい死の達成度は高かった。

講演会の様子

 

■ パネルディスカッション(東部地域における地域包括ケアシステムの実現を目指して)

会場からの質問と回答、地域包括ケアシステムの根幹と言えるACPについてのパネラーのディスカッションが行われた。

(質疑応答)

Q.後方支援病院は、市立病院だけか?

A.病院の機能分化(地域医療構想)を進めているところ。各病院がそれぞれの立ち位置で取り組んでいるが、現在は市立病院のみである。

Q.共同診療の回数や費用は?

A.共同診療は2回まで、費用は1回1000点(1割負担なら千円の患者負担)だが、在宅医と3月に1回以上の情報交換をしている。。

Q.口腔ケアをしてくれる病院は?

A.各病院で対応が違うが、口腔ケアの重要性は高まっている。また入院中に退院後の訪問歯科医師を決める取り組みも鳥取県東部歯科医師会と進めている。

Q.絆ノートの患者数が少ないと思ったが?

A.条件に通院不可(寝たきり等)があるため。また、かかりつけ医から病院への絆依頼が少ない。もっと広報も必要と感じている。

講演会の様子

(ディスカッション)

● ACPについては、地域包括ケアの植木鉢の図にもあるように、地域包括ケアの根幹部分と思う。どのタイミングで誰が関わっていけばいいのだろうか。

▲ 本人と意思疎通が不可になってから家族と、というのが現状である。意思も変わっていく、やはり病気の後(退院時)とかか。

▲ 終末期では特にコミュニケーションをとれるようにしているが、いざ急変時になると想いが変わるケースがある。

▲ 元気なうちに聞けないこともある、日々の記録や発言があれば、想いを紐解けることもあるのでは。

▲ 関係性がないと話せない内容。患者が落ち着いている時に考えるよう言っている。結果を出すのは難しい、話し合いの過程が大半である。

イラスト

● 外国には、意思決定のプロセスにコーディネーターがいる国もある。日本はどうか、それぞれの職種でのご意見をお願いしたい。

▲ 臓器提供カードのように、あたり前に意思決定がなされている時代になる。医療者としても念頭に置き、意識を持っていかなければいけない。

▲ ケアマネジャーも頑張っていきたい。

▲ 主治医、ケアマネが中心と思うが、訪問歯科医、訪問看護師など関係性が出来ている方が関わっていければ。

▲ 訪問看護師も一緒に考えていきたい。

● 入院時は意識がなかったりの場合が多く、病院の医師は本人の想いが聞けないことがある。考えて、聞きとめておくこと、高齢化が進んでいくので大事なことではないか。

ACPは、周知がまだまだかなと思うので、進めていきたい。

 

◎ 参加者:135人

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