鳥取県東部医師会 在宅医療介護連携推進室

1/22 第1回 鳥取食支援研修会(多職種による研修会)が開催されました

鳥取県東部歯科医師会が、「口腔ケア」・「食支援」をテーマとした多職種研究会(地域支援口腔ケア・食支援研究会)を開催しています。研究会を通して、摂食・嚥下に関する基本的知識がまだまだ不足している現状があるため、このたび摂食・嚥下(食支援)に特化した研修会を開催されるに至りました。

 

■ 研修会の概要

フレイル(虚弱)な高齢者は、全身の様々な機能が低下します。口腔においても衛生状態が悪化し摂食嚥下機能が低下し、食事の速度の遅延、食事形態の低下、食欲の低下に繋がり、結果的に誤嚥性肺炎等の老人性疾患を発症します。そのような中、鳥取県東部地域における食事支援の更なる充実を目指し、鳥取食支援研修会を開催いたします。食事支援、食べる楽しみの援助を通じた生活の質の向上、医療・介護関係職種の基礎知識や技術レベルの向上を目的としています。

● 日程・内容  全5日間で10項目の研修を行います

11月 6日 ・(1)摂食嚥下リハビリテーション総論

・(2)摂食嚥下機能の評価

11月20日 ・(3)栄養

・(4)摂食嚥下リハビリテーションの実際

12月25日 ・(5)摂食嚥下障害患者の口腔ケア

・(6)姿勢摂食と排痰法の基本

 1月15日 ・(7)咀嚼嚥下と液体嚥下

・(8)摂食嚥下障害の原因疾患と病態

 1月22日 ・(9)摂食嚥下に関する薬剤の影響

・(10)多種職連携と臨床倫理教育

◎ 参加申込者:54名

(歯科医師12名、歯科衛生士7名、看護師等7名、薬剤師1名、管理栄養士13名、言語聴覚士2名、

ケアマネ等介護職種6名、社会福祉士等相談員2名、食品衛生・厨房関係者2名、その他2名)

 

■ 平成29年1月22日で全10項目、5日間の研修会が終了しました。

全項目受講者に修了証が交付されました。主催者の鳥取県東部歯科医師会、地域支援口腔ケア・食支援研究会の皆様たいへんお世話になりました。受講者の皆様もお疲れ様でした。ぜひ、職場で今回得た知識を活用していただきたいと思います。

平成29年度もほぼ同内容で開催の予定です。日時等決まりましたら当ホームページでもお知らせします。

会の様子

( 写真は、最終日終了後の受講者集合写真です。)

修了証

(上)5日間10項目受講の修了証です。当室橋本も修了しました。)

 

 

◆ 第5日(平成29年1月22日・鳥取県東部歯科医師会舘講堂)

第1回研修会最終日第5日目が開催されました。最終回は、薬剤師による薬剤のお話、医師からは臨床倫理についての講義です。

(9)摂食・嚥下機能に影響を与える薬剤

薬の主作用以外のものを副作用といい、副作用のうち生命に有害なものを有害作用という。高齢者で薬物有害事象が増加する要因は、複数疾患の多剤併用、慢性疾患の長期服用、症候が非定期的な場合の誤投与など疾患上の要因、臓器予備能低下による過量投与、認知機能等の低下によるアドヒアランスの低下や誤服用など機能上の要因と経済的理由等の社会的要因である。薬物動態の加齢変化は、薬物吸収については影響が少なく、薬物代謝・薬物排泄については肝臓・腎臓の機能低下の影響があり注意が必要。高齢者の不穏・妄想・うつ・不眠等への向精神薬の処方は、時に重篤な摂食嚥下障害を引き起こすことがある。

会の様子

嚥下障害の機能的原因の1つに薬剤の副作用があり、これをいかに減らすかが重要。摂食嚥下に悪影響を及ぼす代表的な薬剤を、①パーキンソニズム・錐体外路系障害を生じやすいもの、②注意力や集中力低下・眠気を生じやすいもの、③口腔乾燥の副作用があるものに分類し説明いただいた。また、薬剤の影響で起こる7つの状態、①口渇、②口内炎、③錐体外路症状、④歯肉増殖・肥厚、⑤歯牙形成不全、⑥口腔カンジタ、⑦薬剤や食物の口腔内残留についても講義いただいた。

最後に食欲低下の5つの理由に対する原因疾患や服用薬剤についての確認問題と、正しいオブラートの使い方を伝授いただいた。

介護職は、薬剤の事がわからない方が多いので、薬の名前とか知ってほしい。名前がわかると相談もスムーズになる。

・講師 ひまわり薬局・鳥取県薬剤師会東部支部 中嶋直己 薬剤師

(10)多種職連携と臨床倫理教育

プロフェッショナルとは何か?医療におけるプロフェッショナルの基本的原則は、患者の福利優先の原則、患者の自律性に関する原則、社会正義・公平性の原則である。明確な定義はないが、追い求める姿勢ではないか。

倫理とは、人と人とが関わりあう場での相応しい振る舞い方。特に医療に関わる分野は医療倫理と呼ばれる。医療倫理とは、医療が行われる際に守られるルール、ふさわしい行われ方。日常診療の場で、患者や医療者の立場や考えの違いから生じる様々な問題に気付き、分析して、関係者の価値観を尊重しながら最善の解決策を模索していくことが臨床倫理である。

会の様子

一般的なSOAPでは、高齢者はアセスメントが多すぎてプランが困難になる。医学的適応、患者の意向、QOL、周囲の状況の4つに分けて考えるMPQCの考え方が在宅医療関係者で用いられるようになってきている。このMPQC法は、個々の専門職視点よりチームの視点が重要視され、一緒に取り組むことで利用者の役に立てることが期待される。多種職連携は、インタープロフェッショナルワーク(IPW)とも定義され、各専門領域の可能性と限界を明らかにし、相互補完しながら提供するサービスは、その質が高まるであろう。

・講師 鳥取市立病院生活支援室総合診療科 懸樋英一 医師

 

 

◆ 第4日(平成29年1月15日・鳥取県東部歯科医師会舘講堂)

第1回研修会第4日目が開催されました。今期初めての積雪の中、多くの多職種の皆さんが参加されました。

今回は、歯科医師、医師からの医学的な講義です。

(7)咀嚼嚥下と液体嚥下

介護現場での摂食・嚥下障害の発見ポイントは、5期モデルに沿った日常の気付きである。何らかの障害がある場合は、医療専門的な診査や評価が重要である。障害の程度や咀嚼可能かどうかにより、トロミやミキサーなど食事形態の調整が必要である。認知症については、認知症だから摂食嚥下機能障害があるというものではなく、別々に判断する。

会の様子

咀嚼嚥下は、咀嚼と食塊形成、咽頭への送り込みが並行して進むプロセスモデルで考える。液体嚥下と咀嚼嚥下では、そのプロセスが違うため、液体嚥下の評価・訓練だけでは限界がある。どちらの評価をするのか決めてから評価しなければいけない。咀嚼は、全員にではないが義歯の調整のみで劇的に改善する可能性もある。頚部・頭部の位置の違いによる、唾液嚥下の実習や、リクライニングに対する考え方も講演いただいた。

日々の気付きや観察所見は事業所内で伝えていき、困った場合は、訪問歯科、訪問リハビリなど多職種連携することが有用である。

・講師 鳥取市立病院生活支援室歯科・リハビリテーション部 目黒道生 歯科医師

(8)摂食嚥下障害の原因疾患と病態

嚥下は随意的に始まり、不随意運動に移行する共同反射運動。嚥下と呼吸は同一器官を共有するため、複雑に関連する。固形物の命令嚥下、液体嚥下は5期モデルで理解すること。健常者の咀嚼をともなう嚥下は、咀嚼中に咽頭で食塊形成が起こるプロセスモデルである。嚥下障害は、唇裂などの先天奇形、口腔・咽頭領域の腫瘍及び術後等の器質性嚥下障害と解剖学的な障害を伴わない機能性嚥下障害がある。

会の様子

機能性嚥下障害の原因となる9項目(脳血管障害、脳外傷、神経筋疾患、胃食道逆流、誤嚥性肺炎、呼吸障害、認知症を含む高次脳機能障害、栄養障害、薬剤)についての解説と、日常診療でよくみる嚥下内視鏡(VE)の症例所見の紹介があった。

嚥下障害の医学は、原因病巣と嚥下障害パターンの1対1の対応が得られるまでに至っていないため、嚥下障害の原因と病態を知ること、障害パターンをしっかり評価することで、その特徴に合わせた治療戦略・リハビリテーションを計画することが重要である。

・講師 鳥取生協病院リハビリテーション科 岩田勘司 医師

 

 

◆ 第3日(平成28年12月25日・鳥取県東部歯科医師会舘講堂)

第1回研修会第3日目が開催されました。

今回は、歯科衛生士さんと理学療法士さんからの講義です。

(5)摂食嚥下障害患者の口腔ケア

口腔ケアは、医療と福祉の幅広い接点をもっている。口腔ケアが必要な患者は、様々な疾患、また認知症状があることが多い。口腔ケアは、患者との良好なコミュニケーションや信頼関係の上に成り立っており、心づかいや配慮なども含んだお口のお世話であり、ただ口の中の掃除をするということではない。

会の様子

口腔内の観察やケアをしていないことでQOL低下に繋がっていることがあるが、誤嚥や嘔吐のないよう安全に配慮した口腔ケアの実践が必要である。痛いとか嫌な思いもさせないよう無理強いしないことも必要。安全で効果的な口腔ケアには、ケア前も含め日々の変化に気づき、適切なケアを行うことが必要である。行う側も不安とかあれば他の専門職と相談・連携していってほしい、と講演いただいた。

・講師 鳥取市立病院生活支援室歯科 中山良子 歯科衛生士

(6)摂食嚥下障害患者の姿勢、摂食と排痰法

食支援における理学療法の意義は、摂食・嚥下運動を行いやすい状態に整えることであり、不顕性誤嚥のコントロールや誤嚥物の排出除去の支援が必要である。そのためには普段からの呼吸状態の安定化も重要である。

会の様子

呼吸の筋力低下により、肺活量減少や咳の力の弱りにより痰がたまりやすくなる。痰は、低酸素や肺障害のきっかけとなり、さらなる肺活量減少を導くことになる。不良姿勢のため呼吸がしづらくなっている場合もあり、クッション等の利用によるリラクゼーションで呼吸も楽にできる。排痰法には、体位ドレナージ、咳とハフィング、ACBT、スクイージングの方法がある。最近は背中をたたくタッピングは、不整脈等リスクがあり否定されている。

姿勢によっては、口を開け閉めしにくい、飲み込みにくくなる。首の後屈や肘のリラックスに注意するなど、苦しい姿勢でないか疑問を持って見てほしい。わからないことは、理学療法士等の専門職に相談してほしい、と講演いただいた。

・講師 さとに田園クリニックリハビリテーション科 北浦拓也 理学療法士

3学会合同呼吸療法認定士(3学会:日本胸部外科学会・日本呼吸器学会・日本麻酔科学会)

 

 

◆ 第2日(平成28年11月20日・鳥取県東部歯科医師会舘講堂)

第1回研修会第2日目が開催されました。

今回は、管理栄養士さんと言語聴覚士さんの講義です。

(3)栄養

嚥下食については、ただ単にキザミやミキサーで細かくすればいいという事でなく、見た目や温度も大切である。講師施設でのペースト状を再形成したふんわり食の紹介、また粥ゼリー、お茶ゼリーの作り方や試食も交えた講義であった。

会の様子  会の様子

後半は、フレイル・サルコペニア予防には、栄養状態を良くすること、カルシウム摂取や体を動かし骨や筋肉に刺激を与えることの必要性について講演いただいた。

・講師 鳥取福祉会特別養護老人ホーム若葉台 小山彰子 管理栄養士長

(4)言語聴覚士が行う摂食嚥下リハビリテーション

言語聴覚士が関わる摂食嚥下障害の症例やスクリーニング、訓練方法やリハビリ中止基準等について解説いただいた。

最後、片麻痺、胃ろうの在宅患者に訪問嚥下リハを行った症例の紹介があった。家族や他職種の連携で摂食可能となった。指導や連携も訓練の一部であり、摂食・嚥下リハ分野のリベロ的役割を担っていると講演いただいた。

・講師 鳥取生協病院診療技術部リハビリテーション室

せいきょう訪問看護ステーションすずらん 坂出暁 言語聴覚士

会の様子

 

 

◆ 第1日(平成28年11月6日・鳥取県東部歯科医師会舘講堂)

第1回研修会第1日目が開催されました。

伊奈垣東部歯科医師会高齢者歯科対策部担当理事の挨拶、司会進行で開始されました。

概要は、次のとおりです。

会の様子

(1)摂食嚥下リハビリテーション総論

加齢に伴う種々の機能低下、栄養状態から摂食嚥下障害の原因疾患、誤嚥、窒息等の摂食嚥下の問題点等の総論を講演いただいた。

(2)摂食嚥下機能の評価

患者の全身状態のスクリーニングの項目や注意点、嚥下機能検査(VF、VE、スクリーニング検査)の説明、これらの診断・評価で摂食嚥下リハビリテーションの治療方針が立てられること等を講演いただいた。

 

講師 (1),(2):岡山大学病院スペシャルニーズ歯科センター 村田尚道 助教

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